東京の母子家庭グループ・赤石さん
平均年収200万円余り。多くの母子家庭は経済苦に直面する。一人で子育てをする母親たちでつくる「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」(東京)の赤石千衣子理事(54)は、今や身近な課題である「貧困」の解消に向け、連帯して社会や政治に訴えるよう呼び掛ける。(岩崎秀史) ▽子どもへの影響が心配 「母子家庭はまさにワーキングプア。以前から貧困にあったが、放置されてきた」。二月上旬、広島市南区であった「反貧困ネットワーク広島」の設立総会で、赤石さんは現状を語った。 厚生労働省の調査(二〇〇六年)では、母子世帯の母親の84・5%が働く。その半数近くはパートや派遣社員など非正規雇用だ。母子家庭に支給される児童扶養手当などを加えた平均年収は二百十三万円。全世帯の平均年収(五百六十三万円)の四割弱だ。 ▽借金が引き金に 母子家庭となる理由の約八割は離婚。夫の暴力や借金が引き金となる場合が多いという。赤石さんは「今は生活を維持するのが大変な時代」とまず指摘。「『妻子を養えてこそ一人前』と考えた夫が借金に走ることも。そして借金がかさむにつれ家族関係が壊れ、暴力的な行動につながったりもする」と分析する。 離婚は自らの「選択」ではある。だが赤石さんは「夫の借金や暴力が本当に自己責任なのだろうか」と疑問を投げ掛ける。「社会の急激な変化に、生活が追いついていないのが問題ではないか」。格差の拡大や雇用の崩壊があいまった社会問題とみる。 苦しいのは家計だけではない。収入を増やそうと母親が勤務時間を延ばしたり、仕事を掛け持ちしたりすることで、親子で過ごす時間は減っている。平日の平均育児時間は四十六分という研究調査もある。コミュニケーションの不足が子どもの不登校や病気につながるケースも少なくない、という。 赤石さんは「お金もなく、支えもなく、これで子どもを育てられるだろうか。貧困は子どもに影響し、普通の育ちを保障できなくなる」と恐れる。 ▽命綱は扶養手当 ただでさえ生活が厳しく、子どもがハンディを負いやすい母子家庭。小泉改革は結果として逆風となった。〇二年、母親の就労支援を充実させる代わりに、児童扶養手当の受給期間が五年を超えると最大半額に減らす方針が決まったのだ。 子ども一人だと年収に応じて月額約一万―四万円が支給される児童扶養手当。母子家庭には命綱だ。赤石さんらは必死に厚労省や与野党に撤回を働き掛けた。 局面が変わったのは、格差問題が最大の争点となった〇七年夏の参院選。大敗を喫した与党は見直しを迫られ、児童扶養手当の削減を事実上凍結した。 一連の運動とその「果実」を振り返り、赤石さんは呼び掛けた。「当事者がつながり、為政者に直接訴え続ければ、政策を変えることができる。世の中を変えるチャンスになるんです」 (2009.2.13)
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