中国新聞


ケータイ異変<5> 親の責任
使い方にも注意払って


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大塚小であった勉強会。森川さん(奥)がケータイを操りながら子どもの利用実態を説明した(撮影・浜岡学)

 「子どもに初めて包丁を持たせた日の事、覚えていますか」。広島市が認定する「電子メディア・インストラクター」で会社員の森川宣彦さん(49)がこう切り出した。

 安佐南区の大塚小で昨年十二月十六日夜にあった区PTA連合会主催の携帯電話(ケータイ)の勉強会。小中学生の保護者約四十人が集まった。

 「出刃包丁を渡すのではなく、より安全な一本を選びましたね。正しい使い方も教えたのでは?なのにケータイの場合、どうでしょう。どんな機能があるか知りもせず、買い与えていませんか」

 さらに森川さんは、自分のケータイで中高生が作ったホームページにアクセスしてみせた。援助交際の相手を見つけようとしているのか、女子高生が裸体を掲載したサイトも。「こんな事をしている子がいるの?」「簡単に変な画像に行き着くんだ」。参加者の表情が険しくなった。

 「ケータイがどう使われているのか『知らぬは親ばかり』です」。森川さんは言う。「実は、私もそうでした」。自らもPTA役員の一人。小六の娘と中三の息子がケータイを使っている。

 子どもを狙う事件が相次ぐ世相を前に、ケータイを持たせれば「いつでも連絡できる」と安心に思えていた。が、息子の中学入学後しばらくし、森川さんは請求書の額に目をむく。家族四人で通常二万円台なのに、この月は八万円。息子が歌謡曲をダウンロードする方法を覚えたのが原因だった。

 電話会社に問い合わせ、割引きサービスを利用していない場合、一曲八千円以上かかることもある、と聞いた。親も知らなかった事実。家族で初めてケータイの使い方を話し合い、子どもたちはサイト利用を控える事を約束した。以来、トラブルはないという。

 「安全のために」「子どもが仲間外れになるとかわいそう」。ケータイを買い与える親は増えるばかりだ。

 市教委青少年育成部は昨夏初めて、電子メディアの特性を学ぶ保護者向けの講座を開講した。「持たせる親は使い方も見守ってほしい」との狙いからだった。今年も続ける。

 森川さんは第一期生だ。ほかの修了者十人と、学んだ事をほかの親に広める活動を始めた。「ケータイを電話機能だけと思いこむ甘い認識を改めたい」。春にも正式に会を立ち上げ、講演などの啓発活動を本格化する。(田中美千子)

(2009.1.12)


ケータイ異変
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