安全に配慮 3割が容認
十一月下旬、ある広島市立の中学校を訪ねた。放課後の廊下。すれ違う生徒たちのポケットから携帯電話(ケータイ)の着信音が聞こえてきた。何度も何度も…。 同校はケータイの持ち込みを禁止し、見つけたら教諭が預かる。それでも、持ってくる生徒は減らない。塾の終わりに家族の迎えを呼んだり、帰るコールをしたりするのを理由に「子どもに持たせる方針」と申し出る保護者もいるという。 「親の協力が不可欠なのに…」。教頭はため息をついた。 「安全を守るツール」として、子どもに所持させる保護者が増えている。国の調査では、携帯電話やPHS利用率は二〇〇七年、小学生で全体の三割を超えた。市教委が今年五月、居場所が分かる衛星利用測位システム(GPS)機能の内蔵機種の所有率を調べたところ、全児童の7・5%だった。ここ二年で5ポイント余り伸びた。 市教委指導第二課は「安全対策の観点から一律には禁止できない」とする。各校にケータイの扱いをめぐる方針を明確化するよう指導する半面、内容は委ねる。十月現在で全小、中学校計二百四校のうち、所持そのものや持ち込みを禁止する学校は三十一校(15・2%)である。 「事情が認められる場合のみ」「校内では電源を切る」などの条件付きで容認しているのが、五十九校(28・9%)。その他の学校は対応を決めかねている。 広島市安芸区の矢野西小も対応を検討中。これまでケータイを持ち込んだり、トラブルに巻き込まれたりする事例はないが、十一月下旬には「ケータイ安全教室」を開いた。 携帯電話会社から招いた講師が、六年生に「知らない人のメールには返信しない」「ネット上に名前や住所を書かない」など、基本ルールを教え込んだ。 同小によると、六年生百十二人のうちケータイ所有者は約20%。全国平均より約10ポイント低いが、土田真理子校長は「社会の情報化が進む中、どの子も携帯電話に触れる可能性がある状況」と警戒する。 国の昨年度の調査では、メールによる「ネットいじめ」は年間五千九百件に上った。インターネットのサイトに接続し、詐欺被害を受ける子どももいた。土田校長は言う。「正しい使い方を教えなければ、誰もが被害者にも、加害者にもなり得る」(田中美千子、永里真弓) (2008.12.8)
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