無限に増大 対策は後手
「また『ホムペ』を荒らされたんよ!」。広島市内の中学に通うユウコ(15)が声を荒らげた。携帯電話(ケータイ)で作った自分のホームページ。その掲示板に嫌がらせを書き込まれた、という。 「うざいよ」「調子に乗っとる?」。胸を刺すような文句が並ぶ。相手の名前は表示されないが、「多分、同じ学校の誰かだよ」とユウコ。「でも、気にしない。友だちもやられてるし、しょっちゅうあることだもん」 そんなふうに割り切れる子どもばかりでもない。集中攻撃され、学校に来られなくなる子もいる。「本当にかわいそうだった」とは市内の私立高に通うノゾミ(17)。中三だった二年前、クラスの一人が不登校になった。 原因は夏休み前、誰かがインターネット上のあるサイトを使って公開した「○○中学○○部 ブサイクな人ランキング」。「私の事が書かれてたら…」。サイトの存在を知り、ノゾミも恐る恐るのぞいた。名前の一部をイニシャルにしただけ。攻撃対象が誰なのか、すぐに分かった。 複数のハンドルネームによる、ひどい書き込みもあった。「性格も最悪」「先輩にこびを売ってる」―。二学期以降、彼女の姿を見ることはなくなった。 学校の緊急集会で「かかわった生徒は厳重処分」と警告され、サイトはいつしか消えた。が、誰がサイトにランキングを作ったのか分からずじまいだ。ノゾミは「彼女には、クラス全員が敵に見えていたかもしれない」とため息をついた。 ケータイやパソコンの普及は新たな形態のいじめを生んだ。匿名性を悪用した「ネットいじめ」は増えるばかりだ。 二〇〇七年度は文部科学省が認知しただけでも五千八百九十九件に達し、前年度を約千件上回った。広島県内は前年度の一・四倍にあたる五十六件を数えた。 学校も手をこまねいているわけではない。ある私立校は、生徒に人気のある掲示板を教諭がチェック。悪質な書き込みがあればサイト管理者にメールを送り、削除させている。担当者はこぼした。「ネット世界は無限大。すべてのサイトをチェックするのは不可能なんです」=名前は仮名(田中美千子) (2008.12.29)
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