「孫育てのとき」

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第3部 日本に暮らして

5.お国柄さまざま −異文化交流 知恵を共有

 娘、息子の結婚や出産は、別の家庭の育児観や親子関係との出合い、つまり「異文化」交流でもある。第三部では、違いがより際立つ国際結婚カップルと祖父母世代との擦り合わせぶりを見た。締めくくりに、韓国での出産経験を持つ江津市の主婦服部由美さん(37)たちの声を交え、既に取り上げた四カ国・地域以外のケースを紹介する。

(「孫育てのとき」取材班)

地域ぐるみのインドネシア


韓国は期待も熱く

 「韓国に比べると、日本の祖父母は総じて娘に甘い感じ。母と娘の密着状態が目立つ」。服部さんは一九九九年夏から一年半、文部科学省などの日韓教員相互派遣制度で韓国の高校に勤務した高校教諭の夫、長女と一緒に現地で生活。二女の出産も経験し、帰国後に夫婦共著で「アンニョン!韓国」を自費出版した。

 「韓国では妻は夫の姓を名乗れず、産んだ子だけが後継ぎとして夫の姓を名乗る。妻の親がしゃしゃり出るのは許されない」。韓国の祖父母は孫育てに露骨な要求をする分、お金も労力も惜しまないという。「何にでも体当たりの韓国人は孫育てにも熱い。ポテギと呼ぶおんぶひもで孫を背負い、家事にいそしむおばあちゃんを見て胸が熱くなった」と振り返る。

    ◇

  韓国人の広島市中区、主婦藤岡聖子さん(50)は留学先の日本で中区生まれの夫と出会い、結婚した。「子育て、孫育ては大事。大人になった時、よくも悪くも跳ね返ってくるから」。二年前に亡くなった母との苦い思い出がそう言わせる。

 母は自立心が強く、子どもも四人のうち三人を海外に出し、「孫の面倒はみない。あてにしないで」と言う人だった。ところが父が五十代で先立った途端に心細くなったのか、韓国に残った妹と孫二人の元に通いだした。仕事を持つ妹は家事を母頼みにし、その反動か、母が寝たきりになっても妹は母を介護できない人間になっていた。

 藤岡さんの娘も近くに住む義母にかわいがられ、食べ過ぎで一時、肥満児になった経験がある。「過保護には注意しないと」と戒める。

    ◇

 同市中区に住むフランス人主婦エレーヌ・ペレスさん(52)は結婚後に日本に移り住み、もう三十三年になる。「日本人は最近変わった。おむつを替えるパパや子連れパパの姿が街で目立つようになったもの」

 下松市にいる小学生の孫娘が時々、一人で泊まりに来るのが楽しみ。フランス菓子を手ほどきする。「日本人は子(孫)に甘く、暮らしも子ども中心のような気がする。夫婦でコミュニケーションを取る時間と子どもと過ごす時間とはきちんと分けるべきだと思う」

 「うちは息子の方が家族のペースに合わせ、我慢や協調性が自然と身に付いているみたい」。インドネシア人の看護助手リチャード・ステファネス・カンベイさん(34)と結婚した三保友恵さん(35)は広島市南区の実家で、珍しい四世代同居。両親と妹、それに一人息子の竜己君(5)、祖母(89)と七人で暮らす。

 留学し、カンベイさんと新婚生活を送ったインドネシアでは、祖父母と出かける子どもの姿をよく見かけた。隣近所のつながりが強く、ドアは開けっ放し、地域ぐるみで子どもをはぐくむ雰囲気が懐かしい。

 おおらかな孫育ては、核家族ばやりの日本社会にとって「忘れ物」の一つと言えるのかもしれない。

2006.5.3