3.買ってやりたい −お金教育 小さいうちから
喜ぶ顔を見たい気持ち少し抑え
金額・頻度 ルール決めて
ゴーカートが動かなくなると、影山晴海ちゃん(3)は両親には目もくれず、祖母の忠枝さん(58)=広島市安佐南区=の元に駆け寄った。コートを引っ張り、「もっと乗りたい」とせがむ。「はい、はい」。忠枝さんは笑顔で、百円玉を二枚差し出した。
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観覧車やメリーゴーラウンドが立ち並ぶ、玉野市内の遊園地「おもちゃ王国」。「祖父母が一緒だと、乗り物やおもちゃの売り上げが伸びる」と同園。年間の来園者約四十万人のうち三万人弱が五十代以上だという。
二月中旬の週末。忠枝さんは長男、二男それぞれの夫婦と孫四人と泊まりがけで訪れていた。入園料や乗り物代だけでなく、ホテルの宿泊代も忠枝さん持ち。「出費がかさむけど、孫の喜ぶ顔がうれしくって」。お財布役を買って出た。
孫には「普段から財布のひもが緩みがち」と言う。ねだられると、ついつい流行のおもちゃやお菓子を買い与えてしまう。息子たちからは「誕生日とかクリスマスだけにして」と、しょっちゅう怒られる。
「孫育て」をテーマにした中国新聞の読者アンケートでは、孫を持つ五、六十代の男女百七人のうち約30%の三十四人が「娘や息子の経済支援をしたい」と答えた。実際、孫のための預貯金や学資保険にお金を投じている人も約30%いた。
自らの貯金を取り崩し、孫の学資に毎月五万円以上の保険料を払っている人も。「どうしても甘やかしてしまう」「ジジばか、ババばかと呼ばれないようにしたいが、そうもいかない」…。そんな自戒が漏れる。
「小さいうちからお金のしつけをする必要があります」。ファイナンシャルプランナーの高橋佳良子さん(40)が言葉を強める。二月中旬、広島市内であった、グリーンコープ生協ひろしまの組合員向け金銭教育講座。
高橋さんは、自己破産や悪質商法の被害など、若者の間でお金のトラブルが目立ってきている実態を説明。お小遣いを計画的に渡し、子どもが上手に貯めて上手に使う「お金のコントロール力」を育てるように勧めた。野放図な金遣いを防ぐためには「祖父母の理解、協力も必要です」と付け加えた。
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うなずいて聞き入っていた西区の主婦(35)は「近所に住む義父母は、わが家に来るたび、子どもにお金を渡す。やめてほしいけれど、善意でしてくれているので、なかなか言い出せなくて…」。似た悩みを持つ知人も多いという。
母親でもある高橋さん自身、娘二人にそれぞれ豪華なひな壇が届くなど、親からのプレゼント攻勢に戸惑った。孫にお金を出したい祖父母世代と、子どもをしつけたい親世代と、お金の与え方については考え方の「ズレ」が生じがちだ。
今ほどモノに恵まれない時代に子育てをし、後悔が残った祖父母世代は、孫には不自由がないように買い与えたい。一方で、高度成長期以降のモノがあふれる時代に生まれ育った親世代は、衝動買いや浪費癖などお金の怖さも感じている―。
世代間のズレの背景を、高橋さんはそんなふうに推し量り、解消策を幾つか挙げた。子どもの金銭教育をめぐって祖父母と親が話し合う▽祖父母が渡す孫への小遣いやプレゼントについて、金額や頻度のルールを決める▽孫専用の貯金口座を開くなど、祖父母が「買ってやりたい」気持ちを制御する―。(野崎建一郎)
2006.3.1