「五人目の家族」   その6 ほんとうに貧乏かい?

 次(つぎ)の日(ひ)、バスに二時間(にじかん)(の)って、みんなでおじいちゃんとおばあちゃんのところにいった。

 すぐにゆかりが、物置(ものおき)で貧乏神(びんぼうがみ)をみつけたことと、

 ♪貧乏神は福(ふく)の神

 とおどったことを、身(み)ぶりもいっしょにふたりに話(はな)した。 イラスト

「でもあのおじいさんは、自分(じぶん)が貧乏神だって言(い)ったんだよ。それなら、貧乏神は福の神だって言うの、おかしいと思(おも)うけどなあ」

 勇太(ゆうた)が首(くび)をかしげると、おばあちゃんが考(かんが)え考え答(こた)えた。

「一面(いちめん)だけを見(み)てはいけないってことじゃないのかねえ。ある人(ひと)には貧乏神に見えるかもしれないが、ちがう人には福の神に見えることもある」

「そうかもしれませんね」

 父(とう)さんが深(ふか)くうなずいた。

「人間(にんげん)も、見かけだけではそれがどんな人だかわからない」

 それから、笑顔(えがお)になってつけくわえた。

「それにしても、きのうはおもしろかった」

「楽(たの)しかったけど、ことしもうちはお金持(かねも)ちになれないってことなの?」

 こう言った母(かあ)さんも、顔(かお)はやわらかにわらっている。

「その貧乏神さん、うちに来(き)てもらおうか」

 それまでだまって聞(き)いていたおじいちゃんが、ぽつりと声(こえ)をだした。

「この村(むら)も、だんだん人(ひと)が少(すく)なくなってさみしいよ。将棋(しょうぎ)のあいてがほしいなあ」

「そうすると、ここのうち、貧乏になるかもしれないんだよ」

 勇太が目(め)をまるくすると、

「なあに、そんなことはないさ」

 おじいちゃんは大(おお)きな口(くち)をあけてわらって、

「勇太のうちは、ほんとうに貧乏かい?」

 ちょっとまじめな顔になって、たずねた。


 夕方(ゆうがた)、うちに帰(かえ)ってドアをあけたとたんに、みんなでいっしょに言っていた。

「ただいまーっ」

 返事(へんじ)は、なかった。

「おなか、すいたでしょう。いっしょによもぎのおもちを食(た)べようよ」

 勇太がよびかけると、

「おじいちゃんとおばあちゃんにもらったの」

 ゆかりも大きな声で言った。

「ありがとう。じゃが、だいじょうぶ」

 それに答えて、かすかな声が聞こえた。

「なんといっても、わしは神なのじゃから」

 声が、ちょっとだけいばっていた。

 おわり

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