次(つぎ)の日(ひ)、バスに二時間(にじかん)乗(の)って、みんなでおじいちゃんとおばあちゃんのところにいった。
すぐにゆかりが、物置(ものおき)で貧乏神(びんぼうがみ)をみつけたことと、
♪貧乏神は福(ふく)の神
とおどったことを、身(み)ぶりもいっしょにふたりに話(はな)した。
「でもあのおじいさんは、自分(じぶん)が貧乏神だって言(い)ったんだよ。それなら、貧乏神は福の神だって言うの、おかしいと思(おも)うけどなあ」
勇太(ゆうた)が首(くび)をかしげると、おばあちゃんが考(かんが)え考え答(こた)えた。
「一面(いちめん)だけを見(み)てはいけないってことじゃないのかねえ。ある人(ひと)には貧乏神に見えるかもしれないが、ちがう人には福の神に見えることもある」
「そうかもしれませんね」
父(とう)さんが深(ふか)くうなずいた。
「人間(にんげん)も、見かけだけではそれがどんな人だかわからない」
それから、笑顔(えがお)になってつけくわえた。
「それにしても、きのうはおもしろかった」
「楽(たの)しかったけど、ことしもうちはお金持(かねも)ちになれないってことなの?」
こう言った母(かあ)さんも、顔(かお)はやわらかにわらっている。
「その貧乏神さん、うちに来(き)てもらおうか」
それまでだまって聞(き)いていたおじいちゃんが、ぽつりと声(こえ)をだした。
「この村(むら)も、だんだん人(ひと)が少(すく)なくなってさみしいよ。将棋(しょうぎ)のあいてがほしいなあ」
「そうすると、ここのうち、貧乏になるかもしれないんだよ」
勇太が目(め)をまるくすると、
「なあに、そんなことはないさ」
おじいちゃんは大(おお)きな口(くち)をあけてわらって、
「勇太のうちは、ほんとうに貧乏かい?」
ちょっとまじめな顔になって、たずねた。
夕方(ゆうがた)、うちに帰(かえ)ってドアをあけたとたんに、みんなでいっしょに言っていた。
「ただいまーっ」
返事(へんじ)は、なかった。
「おなか、すいたでしょう。いっしょによもぎのおもちを食(た)べようよ」
勇太がよびかけると、
「おじいちゃんとおばあちゃんにもらったの」
ゆかりも大きな声で言った。
「ありがとう。じゃが、だいじょうぶ」
それに答えて、かすかな声が聞こえた。
「なんといっても、わしは神なのじゃから」
声が、ちょっとだけいばっていた。
おわり