「五人目の家族」   その2 いつからここに

 物置(ものおき)とげんかんは、まっすぐなろうかのはしとはしにある。

 勇太(ゆうた)がいそいでふりむくと、母(かあ)さんが入(はい)ってきたのが見(み)えた。その後(うし)ろには父(とう)さんもいる。

 とたんにゆかりがかけだした。

「ビンボーさんが、物置にいる」 イラスト

 げんかんまでかけていって、母さんにとびついて大声(おおごえ)で知(し)らせている。

 母さんと父さんは、ええっ?というように顔(かお)を見合(みあ)わせたが、あわててくつをぬいで物置のそばまで走ってきた。

 勇太はだまって物置の中(なか)を指(ゆび)さした。足(あし)がすくんで、ゆかりのように走(はし)ることができなかった。

「だれ?」

 すぐに母さんが、ふるえる声(こえ)をだした。

「けいさつ、よびますよ」

「なんだ、おまえは」

 こんどは父さんが言(い)った。

「いつからここにいる」

 ゆかりがさっと父さんの後ろにかくれた。

「わたしたちが初(はつ)もうでに出(で)かけたるすに、入りこんだんだわ」

 母さんの声は、まだふるえている。

「ちがう、ちがう」

 物置の人(ひと)は、きちんとすわったままで右手(みぎて)をひらひらと横(よこ)にふってみせた。

「もっと前(まえ)から、わしはここにおる」

 そのあいだに、父さんは上着(うわぎ)のポケットから携帯電話(けいたいでんわ)を取(と)り出(だ)していた。

「けいさつに電話しよう。どろぼうにちがいない」

「あわてるな。わしはおまえさんたちよりも古(ふる)くから、この家(いえ)に住(す)んでおるのじゃよ」

 その人はおちついたようすで言って、

「お父さんは高夫(たかお)さん、お母さんはあや子さん。この家は四人家族(よにんかぞく)。わしを入(い)れると五人(ごにん)になるが」

 なんでも知っているように話(はな)す。

「この人、いったいだれなの?」

 母さんが勇太の方(ほう)を向(む)いて、早口(はやくち)で聞(き)いた。

 勇太は首(くび)を横にふった。おどろいて、声も出なかった。

「さっきも言いかけたのじゃが、わしは貧乏神(びんぼうがみ)。まあ、ここの家族(かぞく)のようなものじゃ」

 すました顔でその人が答(こた)えた。

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