ななは、ずっと前(まえ)に聞(き)いたおばあちゃんの話(はなし)を思(おも)い出(だ)していました。
「ねえ、今年(ことし)のクリスマス飾(かざ)り、何(なに)にするの?」
ママが話(はな)しかけてきました。
「お星(ほし)さまをたくさん作(つく)ろうと思う」
ななは答(こた)えました。
「お星さまだけ?」
ママはふしぎそうな顔(かお)で言(い)いました。
――だって、おばあちゃんはお星さまになってしまったでしょう。クリスマスの木(き)に帰(かえ)ってくるのよ――
そう答えたいのをななは、ぐっとがまんしました。お星さまの話は、ななとおばあちゃんの大切(たいせつ)な思い出(で)としてむねにしまっておこうと思ったのです。
「魔法使(まほうつか)いのおばあさんと、ほうきに乗(の)った魔女(まじょ)っ子(こ)も作(つく)る!」
ななは元気(げんき)な声(こえ)で答えました。
イルミネーションは、パパの役目(やくめ)です。
クリスマスイブ、ななの家(いえ)のクリスマスの木の下(した)では、にぎやかなパーティーがはじまっていました。
お客(きゃく)さまはななの友(とも)だちと、おばあちゃんの親(した)しかった友人(ゆうじん)たちです。
「ななの誕生日(たんじょうび)と、おばあちゃんの思い出の会(かい)と、クリスマスおめでとうの会です」
パパがあいさつをしました。
「かんぱーい」
って、みんなが言ったとき、クリスマスの木の上(うえ)で、星がキラッと光(ひか)ったようにななは感(かん)じました。
「冷(ひ)えこむわ、明日(あした)は雪(ゆき)のクリスマスになるかな。魔法使いのおばあさんが、ほうきにまたがり風(かぜ)にのって幸(しあわ)せをはこんできたのかな」
ママがそう言ったとき木枯(こが)らしがヒューとふいて、クリスマスの木をゆらしました。
クリスマスの木のえだで、ゆらゆらゆれている魔法使いのおばあさんの顔が、ななには、やさしいななのおばあちゃんの顔と重(かさ)なって見(み)えていました。
おわり