「クリスマスの木」   その3 おじいちゃんの星

 三年前(さんねんまえ)、おじいちゃんが病気(びょうき)でなくなりました。

 その年(とし)の十二月(じゅうにがつ)、おばあちゃんはクリスマスの木(き)にたくさんの星(ほし)を飾(かざ)りました。 イラスト

「なな、おじいちゃんはお星さまになってしまったけど、空(そら)の上(うえ)からクリスマスの木を見(み)ているわよ。ななやパパやママが元気(げんき)で幸(しあわ)せでありますようにって、いつも見ているのよ」

 おばあちゃんは、ななのためにケーキを作(つく)り、ミルクティーを入(い)れました。

「いつもいっしょだったおじいちゃんがいなくなって、さみしくない?」

 ななは、おばあちゃんに聞(き)きました。

「すごくさみしいわ。おじいちゃんの代(か)わりはだれもできないもの。でも、クリスマスの日(ひ)には、おじいちゃんは、クリスマスの木にきっともどってくると思(おも)うの」

 おばあちゃんは空の星を見上(みあ)げて、そう言(い)いました。

「おじいちゃんは幸せだったと思うわ。ななというかわいい孫(まご)に出会(であ)えたのですもの。わたしもななと出会えて、どんなに幸せだったことか。わたしたち、とってもいい家族(かぞく)だと思うの」

 おばあちゃんはそう言うと、ダイニングルームのガラス戸(ど)をあけて、サンダルをはいて庭(にわ)に出(で)ました。

 そして、まるでクリスマスの木にほおずりをするように、そっと顔(かお)をつけました。

「おばあちゃんが今のななぐらいのときだったかしら。もう六十年(ろくじゅうねん)(ちか)くも前(まえ)の話(はなし)だけど、おばあちゃんは戦争(せんそう)で家族(かぞく)をうしなったのよ」

「うそーっ、はじめて聞く話だわ」

「そう、はじめて話(はな)すわね。一人(ひとり)になってしまったおばあちゃんを、家族にしてくれたのがおじいちゃんだったの。そして、ななのパパが生(う)まれて、明(あきら)おじさんが生まれたのよ。おばあちゃんにとっては、とっても大切(たいせつ)な新(あたら)しい家族だった」

「そうそう、ななのパパや明おじさんにも、段(だん)ボールや色紙(いろがみ)で毎年(まいとし)クリスマスの木を作ったわ」

 おばあちゃんは、なつかしそうに話しました。

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