ななの家(いえ)では毎年(まいとし)十二月(じゅうにがつ)に入(はい)ると、すぐに庭(にわ)の樅(もみ)の木(き)にクリスマスの飾(かざ)りつけをしました。
白(しろ)いわたのマントを着(き)た雪(ゆき)の天使(てんし)たち、赤(あか)いぼうしのサンタクロース…。
七色(なないろ)のろうそくの精(せい)たち、星(ほし)の国(くに)の王子(おうじ)さまとおひめさま…。
みんな、今(いま)までにおばあちゃんが考(かんが)え出(だ)したキャラクターでした。
おばあちゃんは毎年、クリスマスの何カ月(なんかげつ)も前(まえ)からスケッチブックに絵(え)をかいて「今年(ことし)のクリスマスのテーマ」を決(き)め、キャラクター作(づく)りを始(はじ)めました。
「クリスマスイブにサンタさんが、ななをプレゼントしてくださったのよ」
これが、おばあちゃんのじまんでした。
十二月生(う)まれのななの誕生日(たんじょうび)をお祝(いわ)いするように、おばあちゃんはいつも楽(たの)しそうに、いくつものマスコットを作りつづけました。
おばあちゃんが作ったマスコットたちを、木に飾ってイルミネーションをつけるのは、おじいちゃんの役目(やくめ)でした。
緑(みどり)が丘(おか)団地(だんち)の中(なか)でも、ななの家のクリスマスの木は有名(ゆうめい)でした。
毎年、十二月に入ると、近所(きんじょ)の人たちがななのおばあちゃんのクリスマスのマスコットを習(なら)いに来(く)るようになりました。
おばあちゃんはクッキーをやき、レモンティーを用意(ようい)して、近所の人たちをむかえました。
いつの間(ま)にか、緑が丘団地のクリスマスは、ちょっとした街(まち)の名物(めいぶつ)になっていました。
ななの学校(がっこう)の友(とも)だちも、十二月になると、家族(かぞく)といっしょにクリスマスの木とクリスマスの街を見学(けんがく)に来(き)ました。
「おじいちゃんのイルミネーションのおかげで、十二月は街が明(あか)るくていいわね」
おばあちゃんはそう言(い)いながら、あついミルクティーを入れ、おじいちゃんと楽しそうに、クリスマスの木をながめていました。
そのすがたは、まるで愛(あい)し合(あ)っているわかい恋人(こいびと)たちのように見(み)えました。