「ドンチキチ」   その7 かぐら、もりあがる

 夕(ゆう)ごはんを食(た)べると翔(しょう)は、とうちゃんと町(まち)の公民館(こうみんかん)へ出(で)かけた。

 ゴリ先生(せんせい)も、そして、ゴリ先生のクラスの子(こ)どもたちも全員集合(ぜんいんしゅうごう)していた。 イラスト

 今夜(こんや)から、かぐら社中(しゃちゅう)のおじさんたちに、かぐらをならうのだ。

 「天神(てんじん)」をクラスのみんなで舞(ま)うことになった。

 ピーヒョロロ、ピーヒョロロ

 笛(ふえ)の音(おと)が聞(き)こえ出(だ)すと、翔もけいくんも野田(のだ)っちも光(ひかる)くんも、しぜんに体(からだ)がリズムをとり出した。

 クラスのメンバーのほとんどが、赤(あか)んぼうのころから、かぐらのリズムを聞いて大(おお)きくなった。

 ゴリ先生の言(い)ったとおり、みんなの体の中(なか)は、かぐらのリズムがしみこんでいるのだ。

 かぐら社中のおじさんたちが舞い始(はじ)めると、子どもたちは、それを見(み)ながら、けっこう上手(じょうず)にまねをした。

 チャカ、チャカ、チャカ

 銅(どう)びょうしが鳴(な)り、大(おお)だいこが八調子(はっちょうし)のリズムをひびかせると、かぐらのけいこはさいこうにもり上(あ)がった。

 気(き)がつくと、車(くるま)いすにのったじいちゃんと、じいちゃんにつきそったかあちゃんが、ねっしんに翔たちのかぐらのけいこを見ていた。

 ゴリ先生のクラスの面作(めんづく)りは、粘土(ねんど)の型(かた)ができて和紙(わし)を水(みず)ではるところまできていた。

 翔のかあちゃんがもってきた柿(かき)しぶや樹(じゅ)えきにつけた和紙を、水ばりした和紙の上(うえ)から四十回(よんじゅっかい)も五十回(ごじゅっかい)もはっていく。

「くせえな!」

 もんくを言っていた野田っちもけいくんももんくを言うのをわすれて、もくもくと作業(さぎょう)をつづけた。

 色(いろ)をつけるころになると、一人一人(ひとりひとり)の面が作った人(ひと)に何(なん)となくにてきて、みんなワクワクした気分(きぶん)になった。

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