「ドンチキチ」   その6 面作りにむちゅう

 粘土(ねんど)をいじるのは、けっこう楽(たの)しい。

 図工(ずこう)のどうぐ箱(ばこ)の中(なか)からプラスチックのへらを取(と)り出(だ)して、三年生(さんねんせい)のゴリ先生(せんせい)のクラスの子(こ)どもたちは、面作(めんづく)りにむちゅうになった。 イラスト

「おれ、天(てん)ぐの面を作る」

 けいくんが言(い)った。

「エエーッ、かぐらに天ぐが出(で)てくるか?」

 野田(のだ)っちが言った。

「出てくるさ、おまえたちは知(し)らんかったんか?」

 じいちゃんが言うと、みんながどっと笑(わら)った。

「ぼくは、しょうきさんを作る」

 光(ひかる)が言った。

「むつかしいぞ、むつかしくてもがんばるか?」

 じいちゃんが聞(き)くと、光は「うん」と答(こた)えた。

 翔(しょう)は鬼(おに)の面を作ろうと思(おも)い、粘土でかたちをととのえていった。

「毎日(まいにち)、昼休(ひるやす)みに校長(こうちょう)先生が、図工室(しつ)を使(つか)ってもええと言ってくださるから、これからは、毎日じいちゃんと二人(ふたり)でお面の作り方(かた)を教(おし)えにきます」

 かあちゃんは、まるで図工の先生のように、そう言うと、じいちゃんの車(くるま)いすに手(て)をかけた。

「そいじゃあ、おまえたちもええ祭(まつ)りができるように、がんばれよ」

 じいちゃんは車いすにすわったまま、手をふると図工室から出ていった。

「ああ、おもしろいかった。もっと面作りたかったよな」

 たかしが言った。

「なんだか、祭りにかぐらをやるのが楽しみになってきた。ワクワクする」

 野田っちが言った。

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