粘土(ねんど)をいじるのは、けっこう楽(たの)しい。
図工(ずこう)のどうぐ箱(ばこ)の中(なか)からプラスチックのへらを取(と)り出(だ)して、三年生(さんねんせい)のゴリ先生(せんせい)のクラスの子(こ)どもたちは、面作(めんづく)りにむちゅうになった。
「おれ、天(てん)ぐの面を作る」
けいくんが言(い)った。
「エエーッ、かぐらに天ぐが出(で)てくるか?」
野田(のだ)っちが言った。
「出てくるさ、おまえたちは知(し)らんかったんか?」
じいちゃんが言うと、みんながどっと笑(わら)った。
「ぼくは、しょうきさんを作る」
光(ひかる)が言った。
「むつかしいぞ、むつかしくてもがんばるか?」
じいちゃんが聞(き)くと、光は「うん」と答(こた)えた。
翔(しょう)は鬼(おに)の面を作ろうと思(おも)い、粘土でかたちをととのえていった。
「毎日(まいにち)、昼休(ひるやす)みに校長(こうちょう)先生が、図工室(しつ)を使(つか)ってもええと言ってくださるから、これからは、毎日じいちゃんと二人(ふたり)でお面の作り方(かた)を教(おし)えにきます」
かあちゃんは、まるで図工の先生のように、そう言うと、じいちゃんの車(くるま)いすに手(て)をかけた。
「そいじゃあ、おまえたちもええ祭(まつ)りができるように、がんばれよ」
じいちゃんは車いすにすわったまま、手をふると図工室から出ていった。
「ああ、おもしろいかった。もっと面作りたかったよな」
たかしが言った。
「なんだか、祭りにかぐらをやるのが楽しみになってきた。ワクワクする」
野田っちが言った。