「じょうだんで言(い)ってるんじゃあないよ。おまえたち赤(あか)んぼうのころから、かぐらのリズムは体(からだ)にしみこんどるよなあ」
ゴリ先生(せんせい)は、まけずに言(い)いかえした。
「二カ月(にかげつ)もあれば、じゅうぶんじゃ。先生いいこと思(おも)いついたぞ。翔(しょう)のじいちゃん面作(めんづく)りの名人(めいじん)じゃ。面作り習(なろ)うて、自分(じぶん)で作(つく)った面をかぶって、かぐらを舞(ま)おう」
ゴリ先生の計画(けいかく)はふくらんだ。
「先生、じいちゃんな、面をもう作られんようになってしもうたんよ」
翔は、ひっしで説明(せつめい)した。
「なぜじゃ? 車(くるま)いすになって、足(あし)は不自由(ふじゆう)でも面作りを教(おし)えることはできるじゃろうが」
ゴリ先生はあきらめなかった。
「ゴリ先生は言い出(だ)したら聞(き)かんとうじゃけえのう」
野田(のだ)っちが翔の耳(みみ)もとでささやいた。
それから一週間(いっしゅうかん)ほどして、図工(ずこう)の時間(じかん)に車いすにのったじいちゃんと、かあちゃんがとつぜん翔のクラスにやってきた。
じいちゃんの車いすをかあちゃんがおしている。
翔はおどろいて、もう少(すこ)しでいすからころげおちそうになった。
「どうしたんじゃ!」
翔のおどろきをよそに、ゴリ先生は、じいちゃんのしょうかいをはじめた。
「きょうから翔のところのじいちゃんから、かぐら面の作り方を教えてもらう。じいちゃんは面作りでは有名(ゆうめい)な先生じゃ。みんな、よく知っとるよな」
図工室(ずこうしつ)の作業台(さぎょうだい)の上(うえ)に、ビニールシートをはって、かあちゃんが車からはこんできた粘土(ねんど)を一人(ひとり)ずつ分(わ)けてもらった。
「きまったことはありゃあせん。一人一人のかおに、にたような好(す)きな面を作れ」
じいちゃんがそう言うと、みんなはどっとわらった。