「ドンチキチ」   その5 じいちゃんが先生

「じょうだんで言(い)ってるんじゃあないよ。おまえたち赤(あか)んぼうのころから、かぐらのリズムは体(からだ)にしみこんどるよなあ」

 ゴリ先生(せんせい)は、まけずに言(い)いかえした。 イラスト

「二カ月(にかげつ)もあれば、じゅうぶんじゃ。先生いいこと思(おも)いついたぞ。翔(しょう)のじいちゃん面作(めんづく)りの名人(めいじん)じゃ。面作り習(なろ)うて、自分(じぶん)で作(つく)った面をかぶって、かぐらを舞(ま)おう」

 ゴリ先生の計画(けいかく)はふくらんだ。

「先生、じいちゃんな、面をもう作られんようになってしもうたんよ」

 翔は、ひっしで説明(せつめい)した。

「なぜじゃ? 車(くるま)いすになって、足(あし)は不自由(ふじゆう)でも面作りを教(おし)えることはできるじゃろうが」

 ゴリ先生はあきらめなかった。

「ゴリ先生は言い出(だ)したら聞(き)かんとうじゃけえのう」

 野田(のだ)っちが翔の耳(みみ)もとでささやいた。

 それから一週間(いっしゅうかん)ほどして、図工(ずこう)の時間(じかん)に車いすにのったじいちゃんと、かあちゃんがとつぜん翔のクラスにやってきた。

 じいちゃんの車いすをかあちゃんがおしている。

 翔はおどろいて、もう少(すこ)しでいすからころげおちそうになった。

「どうしたんじゃ!」

 翔のおどろきをよそに、ゴリ先生は、じいちゃんのしょうかいをはじめた。

「きょうから翔のところのじいちゃんから、かぐら面の作り方を教えてもらう。じいちゃんは面作りでは有名(ゆうめい)な先生じゃ。みんな、よく知っとるよな」

 図工室(ずこうしつ)の作業台(さぎょうだい)の上(うえ)に、ビニールシートをはって、かあちゃんが車からはこんできた粘土(ねんど)を一人(ひとり)ずつ分(わ)けてもらった。

「きまったことはありゃあせん。一人一人のかおに、にたような好(す)きな面を作れ」

 じいちゃんがそう言うと、みんなはどっとわらった。

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