おばあさんは空色(そらいろ)の粉(こな)の入(はい)ったふくろにこんどは緑(みどり)色の粉をくわえた。
二〇三〇年(にせんさんじゅうねん)―。
一郎(いちろう)は、アフリカの大地(だいち)に立(た)っていた。
「今(いま)まで砂(さ)ばく化(か)がすすみつづけていたアフリカの大地を、日本(にほん)の動物学者(どうぶつがくしゃ)が緑の大地にかえました」
と、世界中(せかいじゅう)のマスコミがニュースをつたえていた。
一郎の長(ながい)い間(あいだ)の研究(けんきゅう)は、とうとう実(み)をむすんだのだ。
大(おお)きな木(き)の木(こ)かげで、象(ぞう)やきりんなど、動物たちは、ゆったりとしたときをすごしていた。
一郎の研究は、砂ばくばかりではなく、温(おん)だん化しつづけた地球(ちきゅう)をすくい、ぜつめつしかけていた世界中の動物をもすくうことになるだろうと、日本のマスコミも連日(れんじつ)のように一郎の行動(こうどう)をつたえた。
「山々(やまやま)にもっと木を植(う)えなくてはなりません。もっと人々(ひとびと)は、自然(しぜん)のことを知(し)らなくてはなりません。努力(どりょく)しなければ人間(にんげん)の幸(しあわ)せはえい遠(えん)にやってこないでしょう」
一郎は、マイクを向(む)けられると、こう主張(しゅちょう)した。
世界各地(かくち)で、
「山に木を植えよう。大地を緑にかえよう」
という運動(うんどう)がはじまった。
「今年(ことし)のノーベル平和賞(へいわしょう)は動物学者の一郎先生に決(き)まったようなものです」
テレビ局(きょく)のリポーターが一郎にマイクを向けた。
「地球滅亡(めつぼう)がすくえてよかったです」
そう一郎が答(こた)えようとしたときだった。
「オイ、一郎、いいかげんに起(お)きろよ!」
一郎の横(よこ)にコン太先生がおこって立っていた。
「夏(なつ)のつかれが出(で)ているからといっても、そうそう大目(おおめ)に見(み)るわけにはいかないな。もっとえんりょしていねむりしろよな」
「エッ? コン太先生のお母(かあ)さんが…」
「ねぼけて、何(なに)を言(い)ってるんだ。おれの母さんは広島(ひろしま)の三次(みよし)というところにいるよ」
(ヤバイ、コン太先生はマジでおこっている)
「カッコワリーイ!」
まひろがニヤリとわらった。
「雷(かみなり)が鳴(な)って雨(あめ)がふったよな?」
一郎はまひろに聞(き)いた。
「ずっといねむりしていたくせに、変(へん)なことだけ知(し)ってやがんの」
ゲラゲラとクラスメートのわらい声(ごえ)が聞こえた。雨は上(あ)がり、教室(きょうしつ)の窓(まど)ごしに見える星山(ほしやま)の上(うえ)には、青(あお)い空が広(ひろ)がっていた。
おわり