「子犬(こいぬ)のルリは、私(わたし)がさみしくないようにって孫(まご)のルリが置(お)いていってくれたんだけど、やっぱりここの家(いえ)がすきみたいね」
おばあさんはルリの頭(あたま)をなでながら、はるかに言(い)いました。
「はるかちゃん、ルリをここに置いてもらえないかしら? ルリは、はるかちゃんがすっかり気(き)に入(い)ったみたいよ」
「エッ、ほんとうにいいの? おばあちゃん、ありがとう」
はるかは今朝(けさ)までのさみしさとゆううつさをもうすっかりわすれていました。
「山田(やまだ)さん、ぼくたちがむすこさんの家族(かぞく)だと思(おも)って、ときどきルリに会(あ)いに来(き)てください」
パパが言いました。
「ありがとう、むすこがアメリカにいっしょに行(い)こうと言ってくれたのだけど、わたしは広島(ひろしま)が好(す)きなの。この家にいい人(ひと)が入(はい)ってくださってうれしいわ」
おばあさんはホッとしたような表情(ひょうじょう)をしました。
「アッ、ルリが帰(かえ)ってるぞ」
庭(にわ)の方(ほう)で子(こ)どもたちの声(こえ)がしました。
「おや、ひかるくんとマリちゃん、さっちゃんも、ちょうどよかった。ルリのおせわをしてくれることになったはるかちゃんよ。大阪(おおさか)から引(ひ)っこしてきたばかりなの。九月(くがつ)からは同(おな)じ学校(がっこう)になるから、よろしくね」
おばあさんはそう言うと、ワンピースのポケットから何(なに)かをとり出(だ)しました。
「ルリちゃんが大切(たいせつ)にしていた貝(かい)がらのお守(まも)りだ」
ひかるくんが言いました。
「ほら、水着(みずぎ)入れにつけとくといいよ」
おばあさんは一(ひと)つずつ、みんなに手(て)わたしました。
はるかの手の中(なか)で、シャリ、シャリ、と貝がらの音(おと)がしました。
「みんなでプールに行こうよ」
マリちゃんが言いました。
「はるかちゃんも行くよね」
さっちゃんが聞(き)きました。
「もちろん、行くよ」
はるかは大(おお)きな声で答(こた)えました。
ルリが庭のひまわりの花(はな)の下(した)をいそがしそうに走(はし)りまわっていました。
おわり