学校(がっこう)へむかう足(あし)は重(おも)く、よしろうはのろのろとのろのろと歩(ある)きました。ほんとうはきょうは学校へなんか行(い)きたくないのです。家(いえ)のふとんの中(なか)でじっとかくれていたいのです。水泳(すいえい)なんてだいきらいなのです。
学校についてみると、朝(あさ)の会(かい)はもうおわっていました。ちこくしてしまったのです。みんなはもう水着(みずぎ)に着(き)がえはじめています。それを見(み)ると、とたんに、よしろうのおなかはぎゅっと痛(いた)くなりました。
よしろうはそっと教室(きょうしつ)をでると、保健室(ほけんしつ)にむかいました。なんだか、自分(じぶん)だけが悪(わる)い子(こ)になったような、そんなかなしい気(き)もちです。
保健室に行くと、先生(せんせい)はいつものようにやさしくむかえ入(い)れてくれました。
保健室には、またこうじくんがいました。
こうじくんはてれくさそうに笑(わら)って、「やあ」といいました。
「おす」と、よしろうもへんじしました。
こうじくんはベッドに横(よこ)にならずに、このまえと同(おな)じように運動場(うんどうじょう)をながめていました。
よしろうもそばにいって、カーテンのすきまから運動場を見ました。
運動場では、一年生(いちねんせい)のクラスがかけっこをしています。きっとこうじくんのクラスです。
笛(ふえ)をつかって「よーい、どん」をやっています。四人(よにん)の子が一列(いちれつ)にならんで、先生の笛をあいずに、ぱっととびだしていきます。
「きみ、はしるの、とくい?」と、こうじくんがよしろうにたずねました。
「はしるのはすきだよ」と、よしろうはこたえました。
「ね、どうやったら、はしるのがすきになるの? おしえてよ。ぼくね、『よーい』っていわれたら、頭(あたま)がずきんと痛くなるんだよ」
「いいよ。じゃあ、またじどう公園(こうえん)でれんしゅうしようか」
それからふたりはベッドに横になりました。よしろうのおなかはもうあまり痛くありませんでした。