「ちいさなちいさな海」   その3 あきらめず とべたね

 よしろうがじどう公園(こうえん)に行(い)ってみると、いちょうの木(き)の下(した)に、こうじくんは立(た)っていました。手(て)にはなわとびのひもをもっています。

「いい。じゃあ、とぶよ」 イラスト

 よしろうは両手(りょうて)でひもをもつと、ぐるっと回(まわ)してぴょんととびました。また、ぐるっと回してぴょん。何度(なんど)でもとべます。

「ね、かんたんだろ」

「かんたんじゃないよ」

 そういって、こうじくんは、ひもをぐるんとまわして、ぴょんととびました。またぐるんとまわしてぴょん。それから三度目(さんどめ)にぐるんとまわしてとぼうとすると、ひもが足(あし)にひっかかりました。

 ひもの回し方(かた)がどうもへんです。よしろうは自分(じぶん)のひもの回し方を見(み)せました。手首(てくび)をつかってひもをすばやくぎゅんと回すのです。

 こうじくんは何度も何度もやりました。足にひもが何度ひっかかってもあきらめないで、ひもをぎゅんと回してはぴょんととびます。

 やがて、五回(ごかい)つづけてとべるようになりました。そのつぎには六回(ろっかい)

「そのちょうし、そのちょうし」

 よしろうもいっしょにとびました。

 こうじくんは公園のなかをぐるぐるとなわとびしながら回りました。それから立ちどまると、にっとわらって「できたね」と、うれしそうにいいました。


 きょうはまた水泳(すいえい)がある日(ひ)です。それも一時間目(いちじかんめ)です。朝(あさ)(お)きて服(ふく)を着(き)がえながらそのことをおもっただけで、もうよしろうのおなかはしくしくと痛(いた)みはじめました。のろのろと台所(だいどころ)へいって、のろのろと朝ご飯(はん)を食(た)べはじめました。 「きょうは、みんなといっしょにプールに入(はい)ってごらん」と、お母(かあ)さんはいいました。

 そういわれただけで、よしろうの胸(むね)はどきどきしはじめ、ご飯もなんだかのどをとおらなくなりました。

まえのページ ひょうしのページ つづきのページ