「ちいさなちいさな海」   その2 きみ、なわとびできるの

 ふいにカーテンがひらきました。入(はい)ってきたのは、ひょろりとやせた男(おとこ)の子(こ)でした。「こうじくんは頭(あたま)が痛(いた)いんですって。一年生(いちねんせい)どうし、なかよくしてね」と保健室(ほけんしつ)の先生(せんせい)はいって、カーテンをとざしました。 イラスト

 となりのクラスの子かもしれません。でも、こんな子いたかなあ。よしろうには見(み)おぼえがありませんでした。さいきん転校(てんこう)してきた子かもしれません。こうじくんはベッドに横(よこ)にならず、まっすぐ窓(まど)のところへ行(い)くと、カーテンをそっとあけ、そこから運動場(うんどうじょう)をながめました。

 よしろうもこうじくんとならんで、カーテンのすきまから外(そと)を見ました。運動場では一年生がなわとびをしています。

 口々(くちぐち)に数(かず)をかぞえながらとんでいます。なかには足(あし)にロープをひっかける子もいますが、すぐにまた、「一(いち)、二(に)、三(さん)……」とはじめます。みんな楽(たの)しそうです。ロープを足にひっかけたまま、わらいころげている子もいます。

 こうじくんはじっとそのようすを見つめていました。「ね、きみも、なわとび、できるの?」と、こうじくんがよしろうにききました。「できるよ」と、よしろうはこたえました。「かんたんだよ」「ぼくにおしえてくれないかなあ。ぼくも、あんなふうにとべるようになりたいなあ」

 そういって、こうじくんは、また運動場に目(め)をやりました。なわとびをしているのは、あれはこうじくんのクラスなんだ、とよしろうはおもいました。こうじくんももしかすると、よしろうと同(おな)じように、体育(たいいく)の時間(じかん)がくると頭が痛くなるのかもしれません。「とべるようになるよ、きっと」と、よしろうはいいました。「ぼくがおしえてあげるよ」と、はげますようにいいました。

 そしてふたりは、学校(がっこう)からかえってじどう公園(こうえん)で会(あ)うやくそくをしました。

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