よしろうは、ほかのことならなんだってできます。ボールなげも、なわとびも、てつぼうも、かけっこも、自転車(じてんしゃ)だってほじょ輪(りん)なしで乗(の)っています。なのに、水(みず)だけはいやなのです。よしろうは泳(およ)ぐどころか、プールに入(はい)るのだっていやなのです。
きょうは学校(がっこう)で水泳(すいえい)がある日(ひ)です。
朝(あさ)からおなかがしくしく痛(いた)くなりました。でも、よしろうはそのことはお母(かあ)さんにはいいません。お母さんは、朝ご飯(はん)を食(た)べているよしろうの顔(かお)をしんぱいそうに見(み)ているのです。よしろうが、「水泳があるから、学校には行(い)きたくない」といいだしはしないかと、しんぱいしているのです。ようやくご飯を食べおえると水着(みずぎ)の入った手(て)さげをもって学校へむかいました。一時間目(いちじかんめ)のさんすうの時間(じかん)、おなかはいよいよ痛くなりました。体育(たいいく)は二(に)時間目です。「どうしたの?」と、顔をしかめているよしろうに気(き)づいて先生(せんせい)がたずねてくれました。「おなかが痛いんです」と、カのなくような声(こえ)でよしろうはこたえました。「そう。保健室(ほけんしつ)に行ったほうがいいかな。ひとりで行ける?」
だれかがうしろのほうで、ひっとわらいました。「水泳があるからだよ」という声もきこえます。そうなのです。水泳がある日は、学校に来(く)ることはできても、水泳の時間がちかづくと、きまっておなかが痛くなって保健室に行くことになるのです。よしろうはのろのろと保健室にむかいました。
そんなよしろうを、保健室の先生はにっこりわらってむかえ入れてくれました。「じゃあちょっと、ねててもらおうかな」と、やさしくいって、カーテンでかこまれたベッドに、よしろうをつれていってくれました。