「竹馬(たけうま)ですって。おばあちゃんも小(ちい)さい時(とき)には、竹馬がだいすきだったらしいわよ。いっつも竹馬にのっていたんですって。みんなから、竹馬たけこさんって、呼(よ)ばれていたらしいわ」
「たけこさんって?」とたかしはききました。胸(むね)がどきんとしました。
「おばあちゃんの名前(なまえ)じゃないの」
たかしはおばあちゃんの顔(かお)をまじまじと見(み)つめました。おばあちゃんにも目(め)の下(した)にほくろがありました。あの子(こ)のほくろとちょうどおなじ位置(いち)に。
おばあちゃんもまじまじと、たかしを見つめました。
おばあちゃんもたかしも、なにもいいませんでした。でも、たかしにはわかっていました。竹馬たけこさんは、あの子だということが。おばあちゃんは大(おお)きくうなずいて、にっこりわらいました。
つぎの日(ひ)、たかしは「みの屋(や)」の角(かど)をまがってみずにはいられませんでした。でも、竹馬のあの子はもういませんでした。
うしろで「おす」という声(こえ)がしました。
ふりかえると、よしろうくんとしょうたくんでした。
「また女(おんな)の子とあそんでいたのか」と、よしろうくんはいいました。そして、ふひっとわらいました。
わらわれても、ふしぎなことに、たかしはくやしい気持(きも)ちにはなりませんでした。
「スポーツ公園(こうえん)、いっしょにいく?」と、しょうたくんがたずねました。
「いくよ」と、たかしはこたえました。竹馬だってのれたのです。スポーツ公園の丸太(まるた)わたりだってできそうな気(き)がします。「だけど、きょうじゃないよ。あしたね。きょう、ぼくはほじょ輪(りん)をはずしてもらうんだ」
そうたかしはふたりにいいました。そしてにっこりわらいました。
おわり