「いかなくちゃ」女(おんな)の子(こ)は竹馬(たけうま)にのって、まえの日(ひ)とおなじように、来(き)た道(みち)をもどっていきます。そしておばあちゃんの家(いえ)の前(まえ)までくると、「さよなら」とたかしにいいました。
おばあちゃんはベッドの中(なか)にいましたが、目(め)はとじてはいませんでした。まえの日よりはずっと気分(きぶん)がよさそうです。
たかしが、イチゴと折(お)り紙(がみ)をわたすと、「ありがとうね」と受(う)けとって、それから「あら、あら」とおばあちゃんは折り紙を手(て)にとりました。そして、ひとつひとつをじっと見(み)つめました。「子どものころ、よくおったものよ。なつかしいわねえ」おばあちゃんはカエルとウサギと風船(ふうせん)をそっとなでました。
「ふしぎねえ。さっき、折り紙をおる夢(ゆめ)をたしかに見ていたのよ」といいました。そしてベッドの上(うえ)におきあがると、風船にそっと息(いき)をふきこみ、手のひらの上でぽんぽんとはずませました。
つぎの日、たかしのお母(かあ)さんは「おばあちゃんにクッキーをとどけてちょうだい」と、たかしにいいました。
「いいよ」とたかしは返事(へんじ)しました。
たけこという名前(なまえ)の、あの子はいるだろうか。どきどきしながら「みの屋(や)」の角(かど)をまがると、あの子はいました。でも、きょうは竹馬にのってはいません。竹馬はそばにおいて、ガラスの小(こ)びんをだいじそうにもっています。
「見て」
女の子は麦(むぎ)わらを一本(いっぽん)びんにさしこむと、中の水(みず)にひたしました。それからゆっくり取(と)りだし、口(くち)にあてて、そっとふきました。
ぷるるんとちいさな玉(たま)がふくらみはじめました。シャボン玉(だま)でした。
女の子は、たかしにも麦わらを一本くれました。たかしも、女の子がやったように、せっけん水(すい)に麦わらをつけて、そっとびんから取(と)りだしてふきました。にじ色(いろ)にかがやくシャボン玉がくるくるとふくらみました。