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その7 あのとき、ごめんね
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そのとき、ふっとまりはおもいだしたのです。いつだったか、おねえちゃんとバドミントンをしたときのことを。そのときも羽根(はね)がなくなったのです。ふたりは羽根をさがしました。いっしょうけんめいさがしたのに、羽根はどこにもありませんでした。そして、そのとき、まりは、さがすのがとちゅうでいやになって、おねえちゃんにだまって、ひとりでこっそり先(さき)に帰(かえ)ってしまったのです。おねえちゃんひとりを公園(こうえん)にのこして。
おねえちゃん、あのとききっとさみしかっただろうな、とまりはおもいました。
いま、まりは、暗(くら)がりにひとりでした。なんだかぞっとこわくなりました。
「みーつけた」と、声(こえ)がしました。そして、明(あ)かりがさあっとさしこんできました。
おねえちゃんが、おし入(い)れのふすまをあけたのです。
「いつのまにおし入れの中(なか)にかくれたの。いなくなったのかとおもっちゃった」
おねえちゃんはわらっています。
まりも、おし入れのおふとんの上(うえ)でわらいました。
「出(で)ておいでよ。ホットケーキ、やけたよ」と、おねえちゃんはいいました。
台所(だいどころ)に行(い)ってみると、テーブルの上に、きれいにやけたホットケーキがありました。
「それ、まりのぶんよ。ぜんぶ食(た)べていいよ」と、おねえちゃんはいいました。
「いただきまあす」
まりはいすにこしをかけて、ホットケーキを切(き)り分(わ)け、口(くち)に入れました。とってもおいしいホットケーキでした。
「さっきはわらったりしてごめんね」と、おねえちゃんはいいました。
「あのとき、ごめんね」と、まりもいいました。
「え、なんのこと?」
まりは、うふふとわらいました。そしてハチミツがたっぷりかかったホットケーキをまた口にいれました。
(おわり)
らいしゅうから「竹馬のあの子」が始まります。おたのしみに。
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