「ホットケーキの日」   その6 羽根がなくなっちゃった

 「よおし」

 たかしくんは羽根(はね)をなげあげると、ラケットでおもいきり打(う)ちました。羽根はびゅうっとブランコのうしろのほうにとんでいきました。 イラスト

 おちたところは草(くさ)むらの中(なか)でした。

 「ごめん、ごめん」と、たかしくんはいいました。

 まりは草をかきわけて羽根をさがしました。

 すぐに見(み)つかるとおもったのに、羽根は見あたりません。

 「へんねえ」

 「へんだねえ」。たかしくんもいっしょに草むらをさがしています。

 まりは立ちあがってあたりぐるりと見まわしました。どこにもあの白(しろ)い羽根は見あたりません。

 「こうしよう。ぼくがブランコのこっち側(がわ)をさがすから、まりちゃんはあっち側をさがしてよ」とたかしくんはいいました。

 「いいよ」と、まりは返事(へんじ)しました。

 まりはまたしゃがみこむと、さっきよりもていねいに草をかきわけはじめました。羽根はきっとどこかにあるはずです。

 まりはむちゅうで草をかきわけていきました。

 「あった?」と、たかしくんに声(こえ)をかけてみると、「見つからないよ」と、たかしくんの声が返(かえ)ってきました。

 それにしても、公園(こうえん)はこんなにひろかったっけ。ふしぎにおもって、まりは草をかきわける手をとめて、公園をふりかえりました。

 いつのまにか日(ひ)がおちて、すっかり暗(くら)くなっていました。

 「たかしくん」と、まりはよびました。

 返事はありません。目(め)をこらしてみても、どこにもたかしくんのすがたは見あたりません。

 まりは、きゅうにさみしい気持(きも)ちになりました。

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