「おむすびガツ〜ン」   その4 カモさんお願い

 川(かわ)のそばで大(おお)きなかたいおむすびをかこんで、おじいさんとサルとネズミとカニが考(かんが)えこんでいました。 イラスト

「いったいどうすれば、うちのばあさんのにぎったおむすびがわれるのじゃろうか」

「草(くさ)とりのお礼(れい)にもらえるはずだったのに、おなかがすいたなあ」

「きねでも、われない」

「りっぱなはさみも、はがたたない」そこに、カモが二(に)わ、飛(と)んできました。

 それを見(み)て、ネズミが手(て)をたたいて言(い)いました。

「そうだ、カモさんに空(そら)からおむすびを落(お)としてもらおう」

「岩(いわ)の上(うえ)に落ちたなら、いくらかたいおむすびでもわれるにちがいない」

 カニもはさみをぱちぱちさせました。

「でも、どうやって空まで持(も)っていく?」

 おじいさんがたずねると、サルが川(かわ)のそばの山(やま)からアケビのつるをとってきました。

「なるほど、そうか」

 おじいさんはうなずいて、なれた手つきでつるをつかってさっさとかごをあみました。かごの両側(りょうがわ)に取(と)っ手をつけて、ぼうをひろってきて取っ手に通(とお)して、カモにたのみました。

「かごにかたいおむすびを入(い)れて、ぼうの両(りょう)はしをくわえて飛(と)びあがってくださらんか」

「上から落とせば、おむすびがとびだして、岩にあたってわれるというすんぽうだ」

 サルもうれしそうに言いました。

「そうかも、そうかも。うまくいくかも」

 二わのカモは、ぼうの両はしをくわえてつばさを大きくはばたかせてから、空高(たか)くまいあがりました。それから、ぼうをはなします。

 おむすびはかごからとびだして、ねらいどおりに川岸(かわぎし)の岩の上に落ちてきましたが、

 おむすび、ガツ〜ン、ガツ〜ン、ガツ〜ン

 落ちてははねかえり、落ちてははねかえり、落ちてははねかえりして、また空高くもどっていってしまいました。

「なんてかたいおむすびなんだ」

 みんなは目(め)をまるくして、空を見上(あ)げて言いました。

 おむすびは春風(はるかぜ)に乗(の)って、空でふわふわしています。

(川のそばの平(ひら)たい岩に、大きなおむすびほどのへこみが三(みっ)つあるのを見たことはありませんか? もしかしたらそれはむかし、このおむすびがその岩の上で三回(さんかい)はねかえったあとかもしれませんよ)

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