川(かわ)のそばで大(おお)きなかたいおむすびをかこんで、おじいさんとサルとネズミとカニが考(かんが)えこんでいました。
「いったいどうすれば、うちのばあさんのにぎったおむすびがわれるのじゃろうか」
「草(くさ)とりのお礼(れい)にもらえるはずだったのに、おなかがすいたなあ」
「きねでも、われない」
「りっぱなはさみも、はがたたない」そこに、カモが二(に)わ、飛(と)んできました。
それを見(み)て、ネズミが手(て)をたたいて言(い)いました。
「そうだ、カモさんに空(そら)からおむすびを落(お)としてもらおう」
「岩(いわ)の上(うえ)に落ちたなら、いくらかたいおむすびでもわれるにちがいない」
カニもはさみをぱちぱちさせました。
「でも、どうやって空まで持(も)っていく?」
おじいさんがたずねると、サルが川(かわ)のそばの山(やま)からアケビのつるをとってきました。
「なるほど、そうか」
おじいさんはうなずいて、なれた手つきでつるをつかってさっさとかごをあみました。かごの両側(りょうがわ)に取(と)っ手をつけて、ぼうをひろってきて取っ手に通(とお)して、カモにたのみました。
「かごにかたいおむすびを入(い)れて、ぼうの両(りょう)はしをくわえて飛(と)びあがってくださらんか」
「上から落とせば、おむすびがとびだして、岩にあたってわれるというすんぽうだ」
サルもうれしそうに言いました。
「そうかも、そうかも。うまくいくかも」
二わのカモは、ぼうの両はしをくわえてつばさを大きくはばたかせてから、空高(たか)くまいあがりました。それから、ぼうをはなします。
おむすびはかごからとびだして、ねらいどおりに川岸(かわぎし)の岩の上に落ちてきましたが、
おむすび、ガツ〜ン、ガツ〜ン、ガツ〜ン
落ちてははねかえり、落ちてははねかえり、落ちてははねかえりして、また空高くもどっていってしまいました。
「なんてかたいおむすびなんだ」
みんなは目(め)をまるくして、空を見上(あ)げて言いました。
おむすびは春風(はるかぜ)に乗(の)って、空でふわふわしています。
(川のそばの平(ひら)たい岩に、大きなおむすびほどのへこみが三(みっ)つあるのを見たことはありませんか? もしかしたらそれはむかし、このおむすびがその岩の上で三回(さんかい)はねかえったあとかもしれませんよ)