大(おお)きなかたいおむすびを持(も)ったおじいさんとサルとネズミは、ぞろぞろぞろと川(かわ)のほとりまでやってきました。
「やあやあ、おのおのがた。ここまでいったいなにしに来(こ)られた」
とつぜん、声(こえ)が聞(き)こえました。
見(み)ると、川岸(かわぎし)のすなの上(うえ)で、カニがぱちぱちとはさみをふりあげて、みんなをにらんでいます。
「おむすびもかきの種(たね)も、われらは二度(にど)と見とうはない」
「あの時(とき)とは、ちがうんだ」
サルがあわてて言(い)いました。
「うちのばあさんのにぎったおむすびがあまりにもかたいので、こまっているんだ」
おじいさんも、つづけて言いました。
「きねでたたいてみたんだが、こいつはびくともしない。あとは、カニさんのはさみの力をかりるしかないと思(おも)って、みんなそろってやって来(き)たのさ」
ネズミは、しっかりわけを話(はな)します。
「なあんだ。そういうことか」
カニが、安心(あんしん)したように答(こた)えました。
「そういうことならば、協力(きょうりょく)するにやぶさかでない」
「こいつ、なに言ってるんだよ」
サルが早口(はやくち)でまくしたてました。
「やぶの坂(さか)なら、いまみんなで通(とお)ってきたところだい」
「なにを? おぬし、いまだにわれらの言うことがわからぬか? あの時もじゅくしたかきをとってくれとたのんだのに」
カニが、はさみを高(たか)くふりあげました。
「まあ、まあ、まあ」
おじいさんがふたりの間(あいだ)に入(はい)ります。
「どうだろう。そのりっぱなはさみ、ここで役(やく)にたててはくれまいか」
ネズミも頭(あたま)をさげてたのみました。
「そこまで言われるのであれば」
カニがぶつぶつとうなずきました。
それから、ゆっくりとはさみにおむすびをはさんで切(き)ろうとしましたが、
おむすび、ガツ〜ン
「いたたたたたたたっ」
カニが悲鳴(ひめい)をあげました。
「やっぱりだめか」
おじいさんが、ため息(いき)をつきました。
「いつになったら食(た)べられるのやら」
サルとネズミは顔(かお)を見合(みあ)わせて、つぶやきました。