おじいさんとサルがいっしょに食(た)べようとした大(おお)きなかたいおむすびは、ころころと山(やま)の坂道(さかみち)を転(ころ)がりはじめました。
ころころころ、ころころころころ。
「おむすび、待(ま)て、待て」
おじいさんがよびながら追(お)いかけました。
ころころころ、ころころころころ。
「いったいどこまで行(い)くんだよ」
サルもいっしょうけんめい走(はし)ります。
すると、ころころと転がっていたおむすびは、道(みち)ばたのやぶのそばのあなに、すいこまれるように入(はい)っていってしまいました。
おじいさんもあとを追ってとびこみます。サルがそれにつづきます。
中(なか)では、ネズミが大ぜい、いそがしそうに働(はたら)いていました。
見(み)ると、あなの中の広場(ひろば)にうすがおいてあって、うすのそばにはあのおむすびがあります。
一(いっ)ぴきのネズミがきねをふりあげて、おむすびをたたいていましたが、
おむすび、ガツ〜ン、ガツ〜ン
おむすびはかたくて、大きな音(おと)がひびくばかりです。
「もちつきのまえに、このおむすびをみんなで食べて力(ちから)をつけようと思(おも)ったのに」
ネズミが息(いき)を切(き)らせながら言(い)いました。
「なんてかたいんだ」
「うちのばあさんがにぎったおむすびじゃ」
「ふたりで食べるはずだったんだ」
おじいさんとサルが、おむすびのそばにかけよりました。
「だけど、こいつはかたすぎる。きねではとてもわれそうにない」
ぐったりとしたようすでネズミは答(こた)えて、頭(あたま)をかかえましたが、やがてぽんと手(て)を打(う)ちました。
「そうだ、カニのはさみで切(き)ってもらおう。それしか方法(ほうほう)はなさそうだ」
そこで、おじいさんとサルとネズミはおむすびを持(も)って、ぞろぞろぞろとあなから出(で)かけていきました。
(山の坂道のそばのやぶに、おむすびが入るほどの大きさのあながあいているのを見たことはありませんか? もしかしたらそれは、このおじいさんとサルがとびこんだネズミのあなかもしれませんよ)