トランクは紫(むらさき)色に、冷蔵庫(れいぞうこ)は黄緑色(きみどりいろ)に、ドアはオレンジ色にぬりました。
家(いえ)は見ちがえるほど明(あか)るくなりました。
「きれいな色がいっぱいあってうれしいよ」と、クマはいいました。それから黄色いピアノのふたをあけ、ポロロンとひきました。
「きれいな色なら、なんでも
すきさ
青い空、白い雲、緑の山
きれいな色なら、なんでも
すきさ
赤い花、黄色い月、七色の
虹(にじ)」
えりなはぱちぱちと手をたたきました。
「ちょっとまってて」と、クマはいうと、奥(おく)のへやにいきました。そしてでてくると、白いズボンと白いセーターのかわりに、緑色のズボンと赤いセーターを着(き)ていました。
「とってもすてき」と、えりなはいいました。
「えりなちゃん、ぼく、やっぱりシロクマにはなれない気がする。ぼくはぼくのままでいいや」と、クマはいいました。
パイのいいにおいがただよってきました。
「あ、そうだ。パイが焼(や)けてるよ」と、クマはいって、えりなを台所(だいどころ)につれていきました。
クマはストーブをつけ、それからお皿とフォークをピンクのテーブルにならべ、えりなにパイを切(き)りわけてくれました。
ふたりでアップルパイをたべ、あたたかい紅茶(こうちゃ)をのみました。とってもおいしいアップルパイでした。
「ああおいしかった。ごちそうさま」
「どうしてだろ。ぼくは、なんだかきゅうに眠(ねむ)くなってきたよ」と、クマはいいました。
「わたし、そろそろおうちにかえらなきゃ」と、えりなはいいました。
「さようなら」といって、クマの家をでると、家の前(まえ)のさっきカギが落(お)ちていたのとちょうどおなじ場所(ばしょ)にカギが落ちていました。青いリボンの、えりなのカギです。えりなはカギをひろってポケットに入れました。
雪(ゆき)はいつのまにかやんでいました。雪のつもった道(みち)をえりなは家にかえりました。
(おわり)