クマは白い戸棚(とだな)のカギ穴(あな)にカギをさしこもうとしました。でも、戸棚のカギではありませんでした。
クマは戸棚をあけると、中からノートを取(と)りだしました。
「ここには北極菓子(ほっきょくがし)の作(つく)り方(かた)がいっぱい書(か)いてあるんだよ。そうだ、北極パイを焼(や)こう。きみはなんのパイがすき? 北極チェリーパイ? それとも北極アップルパイ? どんなパイの焼き方だって書いてあるよ」
「わたしはアップルパイがすきよ。それからわたしのなまえは、えりな」と、えりなはいいました。
「わかったよ、えりなちゃん」
そういうと、クマはつーいとすべって台所(だいどころ)にいきました。えりなもつーいとすべって台所にいきました。
冷蔵庫(れいぞうこ)も流(なが)しもやっぱりまっ白です。
クマはてきぱきとはたらきました。パイ生地(きじ)をなん度(ど)ものばし、それをじょうずにお皿(さら)にはりつけました。えりなもりんごの皮(かわ)をむくお手伝(てつだ)いをしました。
パイをオーブンに入(い)れると、「さ、これでよし」とクマはいいました。
「ところで、カギのことなんだけど、なんのカギ?」と、えりなはいいました。
「もしかするとピアノのカギかもしれないな。でも、ためしてみなくちゃわからない」
クマはそういうと、へやのすみの白いピアノの前(まえ)にすわりました。でも、ピアノのカギではありませんでした。
クマはふたをあけると、ポロロンとピアノをひきました。それから歌(うた)をうたいました。
「白いものなら、なんでもすきさ
白い道(みち)、白い花、白い波(なみ)
白いものなら、なんでもすきさ
白い家、白い雪(ゆき)、白い氷(こおり)」
えりなはぱちぱち手をたたきました。
それから「ねえ、ところで、このカギ、なんのカギ?」と、いいました。