「なんのカギ?」   その3 シロクマになりたいクマ

 「はあて」

 クマはカギをつまみあげると、じろじろとながめました。 イラスト

 「宝石箱(ほうせきばこ)のカギににてるな。でも、ためしてみなくちゃわからない」

 クマはえりなに家(いえ)に入るようにいいました。

 クマの家はどこもかしこもまっ白でした。白い床(ゆか)、白いいす、白いテーブル、白いカーテン。なにもかもが白です。

 クマは台所(だいどころ)にいくと、おどろいたことに冷凍庫(れいとうこ)の中から白い宝石箱を取(と)りだしました。そしてカギをさしこもうとしましたが、宝石箱のカギではありませんでした。

 クマは宝石箱をあけると、中から白い氷(こおり)をつまみあげて、えりなに見せてくれました。「シロクマにもらった北極(ほっきょく)の氷。ぼくの宝物(たからもの)」とクマはいいました。

 「あなたはちょっとシロクマににてるわ」と、白い服(ふく)を着(き)たクマを見ながらえりながいうと、クマは「うほっほ」とわらって、「ぼく、シロクマになりたいの」といいました。「シロクマなら冬眠(とうみん)しなくてもいいからね。ぼくは冬眠がだいきらいなんだ。だから眠(ねむ)くならないように、へやを北極みたいにしてるんだ」

 ははん、なるほどとえりなは思(おも)いました。だから、クマの家はなにもかもが白いのです。

 「だけどちょっと寒(さむ)すぎない? ストーブをつけないの?」

 「だって北極にはストーブなんてないだろ」と、クマはこたえました。

 「それになんだか床がつるつるすべるわ」

 床はぴかぴかにみがかれています。

 「北極だもん。氷みたいにすべるんだ」と、クマはこたえました。

 「ところで、カギのことなんだけど、これはなんのカギ?」と、えりなはたずねました。

 「もしかすると戸棚(とだな)のカギかもしれないな。でも、ためしてみなくちゃわからない」

 クマはそういうと、白い戸棚の前(まえ)までつーいとすべっていきました。

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