「はあて」
クマはカギをつまみあげると、じろじろとながめました。
「宝石箱(ほうせきばこ)のカギににてるな。でも、ためしてみなくちゃわからない」
クマはえりなに家(いえ)に入るようにいいました。
クマの家はどこもかしこもまっ白でした。白い床(ゆか)、白いいす、白いテーブル、白いカーテン。なにもかもが白です。
クマは台所(だいどころ)にいくと、おどろいたことに冷凍庫(れいとうこ)の中から白い宝石箱を取(と)りだしました。そしてカギをさしこもうとしましたが、宝石箱のカギではありませんでした。
クマは宝石箱をあけると、中から白い氷(こおり)をつまみあげて、えりなに見せてくれました。「シロクマにもらった北極(ほっきょく)の氷。ぼくの宝物(たからもの)」とクマはいいました。
「あなたはちょっとシロクマににてるわ」と、白い服(ふく)を着(き)たクマを見ながらえりながいうと、クマは「うほっほ」とわらって、「ぼく、シロクマになりたいの」といいました。「シロクマなら冬眠(とうみん)しなくてもいいからね。ぼくは冬眠がだいきらいなんだ。だから眠(ねむ)くならないように、へやを北極みたいにしてるんだ」
ははん、なるほどとえりなは思(おも)いました。だから、クマの家はなにもかもが白いのです。
「だけどちょっと寒(さむ)すぎない? ストーブをつけないの?」
「だって北極にはストーブなんてないだろ」と、クマはこたえました。
「それになんだか床がつるつるすべるわ」
床はぴかぴかにみがかれています。
「北極だもん。氷みたいにすべるんだ」と、クマはこたえました。
「ところで、カギのことなんだけど、これはなんのカギ?」と、えりなはたずねました。
「もしかすると戸棚(とだな)のカギかもしれないな。でも、ためしてみなくちゃわからない」
クマはそういうと、白い戸棚の前(まえ)までつーいとすべっていきました。