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  その5 答えはなぞだ
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 なぞなぞ屋のよっつめの出前は、ややこしくてむずかしい。
  私が何かをあなたが知らなければ、私は私でいられます。あなたがそれを知ったとき、私は私ではなくなります。さて、私は何でしょう。
  たちまち一週間がすぎて、木曜日が来た。とけなかったら、なぞなぞ代百円はらう約束だ。
  まおくんは、貯金箱をひとつ持っている。おじさんがおみやげにくれた。アラビアンナイトに出てくるような魔法使いの形で、おじさんは魔法の貯金箱だと言った。もっとも、ダマスカスという町で買ったそうで、おじさんはだまされたんじゃないかとまおくんは思っている。
  もうすぐなぞなぞ屋のやってくる時間だ。まおくんは貯金箱をゆすった。でもコトリとも音はしない。まおくんはちょっとお金がたまるとすぐに使ってしまうのだ。
 「困ったな。百円ないや」
  そのとき、チャイムが鳴った。きっとなぞなぞ屋だ。しかたない。きちんとあやまって、お金は今度にしてもらおうと、まおくんは思った。
  なぞなぞ屋は自信たっぷり。
 「今日こそ百円いただきます」
  まおくんは、正直に答えた。
 「はい。答えは謎です」
  するとなぞなぞ屋の顔は、真っ青になった。
 「ど、どうしてわかったんだ」
  とたんになぞなぞ屋は、しゅるしゅると縮んでいった。
  まおくんは、ぽかんとした。
 「あれ、ぼくさっき、なんていったんだっけ。そうだ、『答えは謎です』、っていったんだ。そうか、謎は解けないから謎なんだ。解けちゃったらもう謎じゃないんだ。だからあのなぞなぞの答えは、『謎』だったんだ」
  さっきまでなぞなぞ屋のいたところには、あの魔法使いの貯金箱があった。きっとまおくんが、すぐにお金を使ってしまうので、とりもどそうとしたのにちがいない。
 (おわり)
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