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 広島のどこかで
  
   その5  
 
  
 
 
 広島わんが見下ろせる小高い丘の上にホテルがたっています。
  せとないかいこくりつこうえんになっているこのあたりは、木々がおいしげり、鳥たちのよいすみかでした。
  はとのマイとキューは、平和こうえんで生まれましたが、すづくりのばしょをさがして、この丘にたどりつきました。
  「おーい、ここがいいぞ」
  キューがマイをよびました。そこは、ホテルのおくじょうにかかっている大きなかんばんの上でした。ベイホテルはかたかなの下に英語で、BAY HOTELとも書かれていて、キューはそのBが気に入りました。ここなら、雨や風もしのげるし、なによりも、Bのまるみが、たまらなくここちよく思えました。マイもすわってみると、ゆったりとおちつけます。
  「すてき。ここにするわ」
  秋のなかばに、マイは二つのたまごをうみました。はとのなかまは、よりによってあんなところへすをつくるなんて、とわらいましたが、キューもマイも気にしませんでした。
  もうすぐひながかえる、秋のある日のことでした。あさからクレーン車などがきて、ホテルのまえはいつになくそうぞうしくなりました。やがて、クレーン車にとりつけられたボックスに二人の男がのってきて、BAY HOTELのかんばんをとりはずしにかかりました。びっくりしたのはマイとキューです。
  「たいへんだ、にげろ」
  マイはたまごのあるすからはなれました。せっかくのすがこわされてしまう、マイは気が気ではありません。キューもさかんになきたてました。
  「やあ、はとのすだ。まだ、あったかいぞ」
  ボックスの男がいいました。
  「とりはずしは、ひながすだってからにしようぜ」
  クレーンのボックスはするすると下におりていきました。
 おわり
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