| 
 広島のどこかで
  
   その4  
 
  
 
 
 広島のまちからすこしはなれた、アストラムラインのえきの近くに、ツバメのかぞくがすんでいました。かあさんツバメは、二ど目のきょうだいたちを育ておわったばかりでした。みんなで十羽の大かぞくです。
  こツバメのツンツンは、夏のはじめに生まれました。すっかり大きくなって、ウルトラちゅうがえりで虫をとることもできます。
  「見て、かあさん、ほらね」
  ツンツンはとくいになって、なんども空中をとんで見せます。ほかのきょうだいもまねをしますが、ツンツンほどうまくはありません。
  「あんまり目立つと、たかやからすにねらわれるよ」
  かあさんツバメは、はらはらしてちゅういします。
  近くの武田山のちゅうふくに、たかのチョウゲンボウがすんでいました。ツンツンのウルトラちゅうがえりをじっと見ていました。やがてチョウゲンボウは、五本のゆびをひろげたような羽をひろげると、ひくいコナラの木からとびたちました。
  「ピーイ。おやめ、あぶない」
  チョウゲンボウに気づいたツバメのかあさんは、ツンツンにちゅういしました。こツバメたちは、いっせいに、生まれたくすりやののきさきにひなんしました。ききいっぱつでした。
  あさばん、すずしい風がふきはじめました。
  「さあ、そろそろながいたびのしたくだよ」
  あたたかい南の国へかえるのです。すこしずつツバメたちが集まってきました。このあたりはツバメがかえる集合地でした。しゅっぱつのあさがきました。
  「いいかい、とうさんからはなれないようにね」
  山の村から、海のまちから集まってきた何万羽のツバメたちがいっせいにとびたちました。ツバメたちのほんとうのぼうけんのはじまりです。
  |