中国新聞

広島のどこかで

  その2 「ヌートリアのひっこし」


第2話イラスト

 太田川放水路本川とにわかれるあたりに大芝水門があります。そのすこし上流に、ながれついた土砂がつもってできたさながあります。そのがわにヌートリアのふうふがすんでいました。

 がふきはじめると、このにたくさんのアオサギがもどってきて、はんのにとまっては、ギャーギャーとわめきながらすづくりをはじめます。まよなかまでさわがしいので、ヌートリアのふうふはすっかりねぶそくになってしまいました。

 「ねえ、どこかしずかなところへひっこしましょうよ」

 おくさんのリアがいうと、だんなさんのヌートもうなずきました。

 あるあかりのばん、リアとヌートはをぬけだしました。

 ヌートは、あかりにてらされて、もなく川下にむかっておよぎはじめました。リアもそのあとにつづきます。

 京橋川をくだって、木々がしげっているそばをとおったときでした。

 「なつかしいのにおい」

 リアがさけびました。

 そこは、さな取水口になっていて、リアたちがくぐれるほどのひろさがありました。

 「ってみよう」

 ヌートがになってすすみます。どかんのはどこまでもつづいていました。

 「どこへいくのでしょうね」

 三十分もおよいだころ、きゅうにのながれがはやくなって、あっというまにへほうりだされました。広島城えました。そこはおほりでした。

 「ひろいなあ」

 さかなもたくさんいて、水草もじゅうぶんにあります。

 「いいところだねえ」

 ここが、リアとヌートのついのすみかになりました。つきよのばん、なかよくおよいでいるすがたを、いまでもときどきかけます。

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