中国新聞



  その5 


イラスト

 みんなに自分がかわったわけをきかれて、オオカミはおずおずとはなしはじめました。

 「オイラにもわからないんだ。けさおきたら、なにもかもわすれてしまっておもいだせないんだ。きのう、へんなものたべたゆめをみたような…」

 「そうだったのか。それで、いまのきもちはほんとうなのかい、かわらないね」

 カラスがききました。

 「ほんとうだよ。みんなとともだちになりたいんだ。いままでオイラいじわるだったみたいだけど、ごめんね」

 カラスはしばらくえていましたが、おもいだしたようにいました。

 「そうだ、フクロウにたずねてみよう。いい知恵をもっているかもしれない」

 カラスは、そういのこしてとびたちました。

 しばらくすると、カラスは、をくわえてもどってきました。それをオオカミのにおとしていました。

 「このをたべるとわすれたことをおもいだすそうだ。みんな、オオカミにこれをたべさせてもいいかな」

 みんなは、いいとか、いやだとか口々いかわしました。

 「もし、これをたべて、もとのいじわるにもどったなら、にどとともだちはできない、いいねオオカミ」

 カラスのそのことばにみんなうなずきあいました。オオカミがそのをたべるとバタンとたおれて、きをうしないました。オオカミがづいたとき、たくさんの自分をのぞいていることにとまどいました。きょとんとしてみまわしました。

 「オオカミ、みんなしんぱいしていたんだぞ」

 カラスのことばにようやくオオカミはおきあがりました。

 「そうだ、オイラはみんなとともだちになったんだ。もうのオイラにはもどらない。ほんとのオイラをみつけたんだもの」

おわり

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