1 おたすけまん参上
タタタタタッ
階段を上がってくるかあさんの足音がする。あっいけない。と思うまもなく、ガラッとドアがあいた。
「ひろしっ。またこんなに散らかして。片付けなさいと何度言ったらわかるんですか。」
うわあ始まった。かあさんの説教は長い。しかもせりふはいつも同じ。しょっちゅう聞くので、ぼくはすっかり覚えてしまった。自分でお説教できるくらいだ。
「今から片付けなさい。そうしないとほこりだらけになるよ。」
怒り疲れたかあさんは、いつもと同じせりふでしめくくって出て行った。
ぼくは散らかっているおもちゃを押しのけると、ごろんと横になった。怒られるのも疲れるもんだ。大の字になって深呼吸をして、大きな声でひとりごとを言った。
「片付けなくちゃいけないのはわかっているけどさ。ここまで散らかすと、どこから片付けたらいいのかわからない。もういやだなあ。だれか代わりにやってくれないかなあ。」
すると、どこからか、元気のいい声が聞こえてきた。
「やってやろうか?」
ぼくは起き上がってまわりを見た。男の子が立っている。驚いたことに、その子の顔はぼくにそっくりだった。
「あれぇ、ぼくがもうひとりいるぞ。」
「そうさ、ぼくはかたづけひろし。何でもかんでも片付けるぞう。」
と、言うなり、せっせこせっせこ、片付け始めた。
かたづけかたづけたのしいな
スッキリサッパリきれいだな
歌なんか歌って張り切っている。ぼくはおもしろくなって、うはうは笑ったよ。
「いいぞう。もっとやれぇ。」
たちまち部屋は、うそみたいにきれいに片付いてしまった。
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