その3 たまご屋さん
かやねずみのちいねずちゃんは、おひるごはんにふわふわオムレツをたべたくなりました。
それで、森のはずれのたまご屋さんに、たまごをかいにいくことにしました。
かいものかごをもって、森の入り口までやってきた、ちいねずちゃんは、「あれえ」といってたちどまりました。
「たまごや」とかんばんをかけた、みなれないお店があったからです。
「こんなところに、いつのまにか、新しい、たまごやさんだ」
うれしくて、おみせにはいった、ちいねずちゃんは、また「あれえ」といって目をぱちぱちさせました。
おみせの中には、ずらずらずらりと、それはたくさんのたまごがならんでいます。おまけに、白いの、ちゃいろいの、大きいの、小さいの、まんまるいの、だえんけいのと、色も大きさもさまざまな、たまごです。
「いらっしゃい、たまごは、なんのたまごにしましょうか」
みせのおくから、たぬきがでてきていいました。
「なんのたまごかですって」
ちいねずちゃんが、ならべてある、たくさんのたまごを、みてみると、どのたまごにも、それぞれ、ふしぎななまえをかいた札がついています。
うれしさのたまご。かなしみのたまご。こうふくのたまご。けんかのたまご。音のたまご。ゆめのたまご。あさのたまご。
ちいねずちゃんが、あっけにとられていると、たぬきが、にこにこいいます。
「なんだって、かんだって、このよにあるもので、たまごからうまれないものは、ありません。ですから、ここにあるのは、そのたまごの、ごく一部ですよ」
ちいねずちゃんは、しろい小さいゆめのたまごをかいました。
そうして、いえにかえって、そのたまごで、ふわふわオムレツをつくってたべました。
こんどは、どのたまごにするのかな。
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