中国新聞

  第一話 トマトさま


 学校からるといっても、よっこたちの場合は、すそのぞい、つまり谷間を、ざしにかれながら、キロもいてるのだから大変だ。

「はるちゃん、いでこ」

「うん」

 二人はいつものどんどん()で、パンツのままいだ。

「ひょーおっ、つめたーい!」

「ふおーっ、気持ちいいっ!」

 ところが、がってきだすと、前以上にぐったりし、のど もからからになっている。へんだなあ。まいったな。

 だから、なトマトがすずなりになっているのそばにきた とき、二人は、わずあわせ、のどをごくんとならした。

さま、おい。このトマト、はるちゃんとに、一個ずつ、どうかおみくださいまし。」

 よっこは、真剣をつむり、両手わせてった。すると、いたことに、のうねのに、いあごひげをたくわえた着物姿老人が、いつえをついてすっとち、

「よしよし。おまえたちのいをいてつかわそう。一個といわず、十万個でも、百万個でも、すきなだけべるがよい」

 と、おごそかにうのだった。たことのないだ。

「ただし、一個につき二口半べねばならんぞ」

「えっ? 二口半!?

 はるちゃんは、さめのをもいだが、よっこは、とびきりきくまるいやつに、ティラノサウルスのようにかぶりついた。

 あまくすっぱいトマトのは、どっとからのどへれこみ、ほおからへとった。

さま、ありがとう!」

 よっこもはるちゃんも、そのさまに握手してもらった。


 その、よっこがさんに昼間のことをすと、くのミッションスクールにかよっているさんは、「それはイエスさまにちがいない」とった。

 しかし、実際は、となり老人ホームをぬけだしたおじいさんなのだった。警察がさがしにきて、わかった。

 よっこには信じられなかったけれど、トマトさまがわりをしてくれたそのおじいさんは、自分がだれであるかもわからないまま、二日間行方不明になっていたということだった。


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