第4話 ぬけ道のまんなか
ピパって、子どものころのパパのことだよ。
ピパがくらしていた町には、ぬけ道がたくさんあった。ピパがい
つも通っていたのはアリマさんちとササキさんちの間の道。ここを
通ると公園にすぐ行ける。
あの駄菓子屋さんは、その道のまんなかにあった。変なお店だっ
た。夕方、電信柱の電灯に明かりがつくと、そのお店は開く。お店
にいるのはおばさんだけ。黒くて長いかみの毛を後ろでたばねてい
て、それが黒ネコのしっぽみたいだった。
そのぬけ道はせまくて、子どももすれちがうことができなかっ
た。ある日、ピパがその道を歩いていたら、あっちから男の子がや
ってきた。
その子は、ピパがあともどりするのがあたりまえっていうように
ずんずん進んできた。ピパも、ぜったい道はゆずるもんかって、ず
んずん歩いて行った。
ところが、ぶつかると思ったら、すれちがってしまった。なにが
なんだか、わからなかった。ひょっとしたらあの子、ピパの足のあ
いだをくぐったのかもしれない。そのとき、ピパの足に、なにかふ
んわりしたものがさわったから。
きのう、パパはその道に行ってみた。たしかにアリマさんちとサ
サキさんちのあいだに、ぬけ道はあった。でも、子ども一人やっと
通れる道だから、お店なんか、あるわけがない。
おかしいなぁって思いながらのぞいていたら、ぬけ道のまんなか
で、何かがキラリと光った。ネコの目だった。そこには一匹の黒ネ
コがいたんだ。
そのネコがパパの顔を見て、「ニャア」と一声鳴いた。それがパ
パには、「まあ」に聞こえた。
「まあ、あんた、あのときの子だね」
そういっているように聞こえた。あれはネコのお店だったのかな
ぁ。
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