(1)ウサギのケーキの巻
ウサギのかあさんが、大きなケーキをつくりました。
まわりをまっ白なクリームでかざって、
子ウサギたちをよびました。
「ミーリ、リーナ。いらっしゃい」
「わあ、すごい。ケーキだ」
だいどころにかけこんできたミーリが、スキップしながら声をあげました。
「えーっ。なんにものっかってないの」
リーナがテーブルのうえのケーキをのぞきこみながら、首をかしげました。
「ここからさきはあなたたちがつくるのよ」
かあさんがえがおで、せつめいします。
「なにでかざりたい?」
「わたしはチョコレート」
ミーリが目をかがやかせてこたえました。
そのとき、
「そんなもの、のっけるんじゃない」
どこからか声がきこえました。
「なにかいった?」
かあさんが子ウサギたちにききました。
ふたりは首をよこにふります。
「わたしはいちごがいい」
リーナもいいましたが、
「だめだ、だめだ。それじゃあせっかくのケーキがだいなしだ」
またおなじ声です。
三人はぐるりとだいどころを見回しました。
でも、だれもいません。
「さあさ。手をあらってからはじめましょう」
気をとりなおして、
かあさんがふたりに声をかけました。
「ハーブティーにしましょうね」
「そんなきどったもの、やめろ。お茶は番茶がいちばんさ」
その声が終わるか終わらないかのうちに、なにかがとびこんできて、とびだしていきました。
ウサギの親子がはっと気がついたときにはケーキは消えていて、かわりにきつね色の毛が三本のこっていました。
「ああーっ。金ぱつキツネだ」
三人はいそいで外にでて、あとを追いました。
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