中国新聞


 TVなし生活 〜広島市の「実験」から

(下)時間の使い道
  暮らしを見直す機会に

 「一週間ぶりにテレビを見た時、『目が痛い』って子どもが言ったんです。目に与える影響なんて考えたこともなくて、びっくり」

グラフ「「実験」前後での家族の変化」

 広島市の「実験」に、主婦内藤智美さん(34)=西区=は七歳と三歳の娘二人と親子で参加した。夜勤の多い夫(34)には休日に協力してもらった。

 「子どもの心の発達に、テレビ漬けの生活はまずいなあと以前から思っていたのが参加の動機」。平日は夕飯時から午後十時、十一時に就寝するまで、ほぼつけっ放しの毎日だった。

 実験の初日、「テレビをみない」と娘が書いた張り紙でテレビ画面にふたをした。暇つぶしに、夕飯の支度やおやつ作り、絵本の読み聞かせ、盤上ゲームに娘を誘った。子どもらは、「よう頑張っとるね」と周りから褒められたのも弾みになったようだ。

 代わりにラジオをつけた。「私がながら族なので。何か音や映像を流しながら、家計簿をつけたり雑誌をめくったりして時間を過ごしたくて」

 「テレビなし」の二週間は、子どもへの教育的な効果以上に、親が自分自身や暮らしを見つめ直す間になったようだ。感想アンケートにも、そんな声が目立つ。

 <家族の生活の見直しができてよかった。以前は平日は夜遅く、週末はずっとテレビを見ていた。その時間をポンと切り替えられた。読書を楽しみ、ゆっくりとした静かな生活を送っている>

 <ぐずったり泣いたり、言うことを聞かないとき、好きなビデオを見せて気分を直すということができなくて、毎日毎日、本当に子どもと体当たりの日々だった>

 <テレビを見る時間を短くするのは大切だと思うが、常に新しい情報を取り入れて生活するスタイルを変えるのは、現代社会で生きる以上、できないと強く思った>

 <子ども番組も(親が)一緒に見て感想を言ったり、子どもの思いに共感してやると、心の育ちに良いと思う>

 昨年九月の「実験」からほぼ半年。内藤さんの家では、平日四、五時間つけていたテレビが「今は、長くても二時間」だとか。娘二人は早寝早起きになり、目覚まし時計が不要になったという。

 「親子のコミュニケーションづくりのためにも時々、テレビなし週間をやってみようかな」と内藤さん。「テレビをみない」の張り紙は、まだ取り外していない。

(2006.3.27)

(上)ショック療法(中)禁断症状


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