中国新聞


 TVなし生活 〜広島市の「実験」から

(中)禁断症状
  依存気味の親が苦しむ

 一週目はテレビもビデオも一切つけず、二週目は七日間で計二時間まで―という「実験」生活。禁煙や断食のような難行苦行に、音を上げたのは親の方だった。

 二週間後、こんな感想が親から上がった。

 〈テレビのない生活は、子どもより大人の方がつらかった。いかにテレビに依存しているか、よく分かった〉

 〈わが家で一番苦しんでいたのは父親であり、我慢できないのは結局、子どもより親の方かも〉

グラフ「保護者自身はテレビ・ビデオが好きか」

 「実験」に挑んだ家族へのアンケートによると、「保護者自身はテレビ・ビデオが好きか」の問いに「好きである」は28%、「どちらかといえば好きである」は52%と答え、合計で80%に上っている。

 参加家族の親は、三十代や四十代が大半を占める。お手本になるはずの親自身が、高度成長期以降に生まれた「テレビっ子」世代。禁断症状には苦しんだようだ。

 我慢できずに、〈家で見られないので会社で見て帰宅〉したり、〈子どもが寝てからテレビをつけ〉たりする非常手段に出た親もいた。

 「実験」参加は大体、妻が言い出したらしく、感想には夫に対するぼやきが目立つ。

 〈主人はテレビ世代なのか、朝起きてはつけ、帰宅しては寝るまで、大して見たい番組があるわけでもないのにつけてしまい、(実験に)協力してもらえない〉

 〈夫はつらかったようだ。「はー、ええじゃんかー」と言う日も。「子どもにやり遂げる姿を見せんと」と言うと、頑張ってくれた〉

 アンケートをまとめた市教委育成部の小林武司主幹(44)は「低年齢の子どもほどテレビなしの生活になじむのが早い。禁煙が難しいのと同じで、テレビを見る習慣が長引くと、依存症気味になるのかもしれない」とみている。

 二週間の難行苦行の末に、あることに思い当たった親もいる。

 〈「テレビが見たかったら、宿題を早くしなさい」とか「部屋が片付くまでテレビ見られないよ」などと、(子どもに)何かをさせるためにテレビを引き合いに出していたことに気付いた。親が忙しいときにテレビに子守をさせていたのだと思った〉

 次回は、チャレンジを通じ、それぞれの親子が達した境地、教訓などを拾い出してみる。

(2006.3.20)

(上)ショック療法(下)時間の使い道


子育てのページTOPへ