TVなし生活 〜広島市の「実験」から
二週間、家でテレビやビデオを見ない生活を続けられますか―。広島市の呼び掛けで昨年九月、五十五組の親子が「実験」に挑んだ。視聴時間ゼロを通したのは、五組。市がまとめた参加者アンケートからは、さまざまな親子像が浮かぶ。(石丸賢) □ ■ ■ □
一週目はテレビ・ビデオを一切見ず、テレビゲームも(携帯機を含めて)しない▽二週目は、一週間で計二時間までOK―が「実験」のルール。中学生以下の十五〜一歳を子育て中の市内の五十五家族が参加した。 〈「つらい人生だ」とこぼしている〉 親が、そう報告した小学生の姉妹は一週目の初日、二日目と荒れた。三日目にはあきらめ、漫画を読みだしたという。 ほかの家庭でも、〈テレビを見ないのは絶対嫌だと言って怒る〉〈いらいらしている〉と当初は目立った子どもの不平不満が、次第に〈テレビがなくても大丈夫〉〈見たかったけど我慢した〉と変わった。 実際、一週目は参加家族の43・5%が「一週間通して達成」。「何日か達成」は50・0%、「全くできなかった」は6・5%だった。 「今どきの子どもにとって、テレビもビデオも生まれた時からあって当たり前で、空気を吸うのと同じ感覚。突然、一週間禁止というのはかなり苦しかったはずですよ」。今回の「実験」を呼び掛けた市教委育成部の小林武司主幹(44)は、子どもたちの柔軟さと頑張りを褒める。 そのショック療法が効いたのか、二週目に入ると、子どもたちは落ち着きを取り戻す。 一週目に〈学校でテレビの話題についていけなかった〉と漏らした男女三人のきょうだいも、二週目は〈特に問題なし。何も言わなくなった〉と親が書く。 子ども本人の感想が頼もしい。▽できるかなと思ったけど簡単だった。一番楽しかったのは、お父さんとお母さんとゲームをしたこと(男子・六歳)▽まだ続ける。テレビ見なくても平気(女子・七歳)▽本をたくさん読めてよかった(男子・十二歳)。 四歳の少女は「実験」後、こうつぶやいている。〈野球(中継)がつかないからいい。父さんが、いつも見るから…〉 「テレビを見たい」という禁断症状がひどかったのは、子どもより、実は親の方だった。次回は、親たちの難行苦行ぶりを紹介する。 (2006.3.13) |