周囲には気丈な姿も
母親は助けを求めていたのか―。7日、廿日市市の母親(26)が生後4カ月の男児を殺害したとされる事件。母親は6月、市の相談窓口で育児の悩みを打ち明ける一方、周囲に気丈な姿も見せており、SOSをくみ取る難しさがあらためて浮き彫りになった。 田園の中にぽつりと立つアパートの一室で悲劇は起きた。近くの会社に勤務する事務員女性(41)は「無表情でぼうぜんとしていた」と緊急逮捕された母親の姿を語る。 市福祉保健部によると、母親は6月初め、市の子育て支援センターを訪れ、保健師に子育ての悩みや不安を相談。表情に元気はなかったという。しかし、7月に担当者が2回にわたってアパートを訪問した際、母親は明るく応対。児童虐待の痕跡もなかったという。 訪問した担当者の一人で母子保健推進員の女性(54)は「若いのに頑張っていると思った。悩みを聞いたことはなかった」と振り返る。母親は集会所で毎月開く子育てサークルやクリスマス会にもよく参加していた。 一家は父母と幼稚園児の長男、男児の4人暮らし。母親の変化に気付いた友人もいる。近くの主婦(37)は「(男児の)出産後に元気がなくなった。もっと声を掛けてあげればよかった」。男児を出産後、長男の幼稚園の送迎バスの見送りで姿を見なくなったという。 ただ、兆候はかすかだった。別の近くの主婦(32)は事件を聞いてただ驚く。「8月に家族が仲の良い姿を見た。思いとどまってほしかった」 「どんな人が住んでいるのか、ほとんど知らない」とアパートの近所の主婦(52)。孤立を深める母親がそこにいた。 (2012.9.8)
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