9割受け入れで地域定着 協力医減り継続に懸念も 呉市医師会が朝日町に小児夜間救急センターを開設し、10月で8年が過ぎた。診療時間帯(午後7〜11時)の患者の9割近くを引き受け、他病院の負担減に貢献している。存在感が高まる一方で、協力医の減少、高齢化という課題に直面している。 2003年10月、市内で小児夜間救急を担う国立病院機構呉医療センター、呉共済病院、中国労災病院の負担を軽減するため開設した。当初の受け入れ割合は5割弱。市民の認知度も高まり06年度から増加傾向を示し、08年度に8割を超えた。 市医師会によると、10年度は午後7〜11時、センターと3病院で夜間小児救急を受診した患者は計5221人。そのうち88・5%に当たる4619人がセンター利用だった。 ▽開業医の高齢化 中国労災病院の小西央郎小児科部長は「呉の夜間小児救急を支えている。センターがないと、救急病院の当直医は仮眠も取れない」と、存在の大きさを指摘している。 だが、今後を不安がる声も上がる。協力医が減っているのだ。協力医となっている開業医、別の病院の勤務医が交代でセンターに詰め、診療にあたる。当初は36人体制だったが、開業医の引退や勤務医の減少で24人になった。半数を占める開業医の平均年齢は60歳を超える。02年4月以降、市内で小児科開業はなく、減少に歯止めがかかるか不透明だ。 協力医の減少が進めば、センター継続は困難になるのではと憂慮する声もある。広島国際大医療経営学部の江原朗教授(医療政策)は「呉単独での夜間・休日診療は医師にはかなりの負担。このままでは他地区と一緒に実施することになる」と指摘する。 ▽市民の協力必要 センターの機能が低下すれば、患者は広島市など他地区に出向かなければならないと懸念する関係者もいる。市医師会の石井哲朗救急担当理事は「他地区で受診をせざるを得ない事態を防がなければならない」と対策を模索している。 協力医確保に努める一方、市民も意識を変える必要がある。江原教授は「医師の負担軽減のため、不要不急の受診は控えるべきだ」。地域医療の将来像をどう描くか。医療関係者や行政はもちろん、市民も現状を知り、考える時期がきている。(柳本真宏)
(2011.10.31)
|