2児殺害事件で東区牛田の町内会 集会所で相談会 絆取り戻す試み
広島市東区牛田地区の町内会が、地元で起きた母親による2児殺害事件をきっかけに、子育て中の母親を地域ぐるみで見守る活動に乗り出した。町内会への加入率が低迷するなど、希薄になりがちな地域の絆を取り戻す試みという。住民のサークルを通じて育児相談を始めている。 「近所に友人がいなくて」「孤独で子どもに当たってしまう」。牛田集会所(牛田旭)の一室で、3歳以下の乳幼児のいる母親たち約20人が、車座になって互いの育児の悩みを打ち明ける。音楽講師の沢田及子さん(41)=同区牛田旭=が主宰する音楽サークル。事件後、子育て中の母親に呼び掛けて育児相談会を始めた。 2児殺害事件がきっかけだった。「育児に悩んだ末の犯行と知りショックを受けた」と沢田さん。「母親の気持ちを開放できる場になれば」と、町内会と相談。サークルの場を集会所に設けて、相談会を開いている。 牛田学区連合町内会の世帯加入率は60・9%(7月時点)と、全市平均の66・3%を下回る。20年前には80%を超えていたが、マンションなど賃貸住宅の増加で減少傾向が続く。音楽教室に参加する若い母親たちも、数年で引っ越していく「転勤族」が多い。 2歳の長女と5カ月の長男を連れ、育児相談会に参加している女性(35)=牛田本町=も、4月に広島県外から転入したばかり。「半年近く知人ができなかった。事件がひとごととは思えなかった」と打ち明ける。「サークルに通い始め、先輩ママと知り合った。地域との関わりが心強い」と笑顔をみせた。 連合町内会の野々部卓会長(77)は「孤立しがちな母親を地域で見守っていれば、事件を防げたかもしれない。住民同士の絆を強め、子育てに優しい安全な街づくりにつなげたい」と話している。(和多正憲、前岡愛)
(2010.12.14)
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