中国新聞


□■ 百ます校長の通信簿 ■□

(中)ドーナツ化
  反復学習 地元浸透せず

 尾道市立土堂小の陰山英男校長(48)の実践は、「陰山メソッド(方式)」とも呼ばれる。「読み・書き・計算」の反復学習や生活習慣の改善を中心とするその方式は、今や全国に知れ渡る。中国地方でも自治体ぐるみで取り入れるケースも出てきた。が、地元の広島県や尾道市内には…。

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土堂小の教育研究会。全国から教育関係者たちが集まり、パソコンを使った公開授業を見学する(1月19日)

 「これをやるとテストの平均点は九十五点になるはずです」。二日、土堂小の視聴覚室。視察に訪れた山陽小野田市教委の職員や同市立小校長ら十七人を前に、陰山校長が自信たっぷりの説明をしてみせた。自ら考案した学力向上戦略。A4四枚に反復学習や漢字の前倒し学習の手順を示す。

 同市教委は、子どもの生活改善と学力向上を目指す中で陰山メソッドに着目した。四月から市立小全十二校で反復学習や漢字の前倒し学習に取り組み、将来は「山陽小野田方式」を確立する―。そんな青写真を描く。

 二〇〇二年度、文部科学省の「新しいタイプの学校運営」を探る研究校に指定された土堂小。その新タイプを体現したのが翌春、就任した陰山校長だった。研究発表会の度、県内外から三百―四百人の教育関係者が参加。多くのメディアも取り上げ、千光寺山のふもとにある一公立小は一躍、有名校になった。

 全国的な評価

 宮城県栗原市、高知県室戸市、佐賀県内の公立三校…。全国的な広がりを見せる陰山メソッド。一方で、おひざ元の広島県や尾道市には、意外なほど波及していない。

 尾道市教委は〇五年度から三年間の教育計画「尾道教育さくらプラン」に、「早寝・早起き・朝ご飯」運動の展開を盛り込む。だが、山陽小野田市のように、土堂小の実践を積極的に取り入れる姿勢はない。

 「各校が陰山方式では金太郎あめのようで、学校選択の幅を狭める」。学区自由化に踏み切った尾道市教委の平谷祐宏教育長は、こう言う。「『土堂に負けまい』と、特色ある学校づくりを競うことにつながった点は大いに評価できる」とのスタンスだ。

 「極端な手法」

 尾道市立小の校長は「基礎・基本教育の一辺倒で、心の教育への取り組みがいまひとつのように思える」と受け止める。福山市立小の四十歳代の女性教諭には、八年前の旧文部省の是正指導後の教育現場と重なって映る。「学力定着や評価は必要だが、極端な変化や手法はひずみを生みかねない」との視線を送る。

 鳴り物入りで陰山校長を採用した県教委。が、今回の転身劇は「寝耳に水」だったこともあり、冷めた見方が漂う。陰山メソッドも「各市町がそれぞれ特色のある教育プランを持ち、各学校、先生それぞれの教育方針がある」(二見吉康指導第一課長)と、数ある手法の一つととらえる。

 陰山校長は「県や市の方針に入っていなくても近い将来、土堂の実践は国の学習指導要領に位置づけられる」と自負する。その方式をめぐる教育界の評価は「遠高近低」の模様を描く中、当の校長は実践の舞台を去る。(榎本直樹)

保護者の5段階評価
 1年生
父親
(41)
2年生
母親
(31)
3年生
父親
(45)
4年生
母親
(42)
5年生
母親
(44)
6年生
父親
(34)
他校との連携
カリスマ性
開かれた学校運営

(2006.3.24)

(上)様変わり(下)カリスマ後


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