中国新聞


産地見学 実りの食育
朝食取る子増加で実績 三原小
栄養教諭が調理も指導


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佐木島のアリスメロン畑を訪ね、収穫前の実を観察する児童

 三原市館町の三原小が市内唯一の栄養教諭の指導の下、食育に力を入れている。地元特産の食材の生産現場に足を運んで味わったり、調理を体験したり…。朝食の大切さも学ぶなどして、子どもたちが地域とのつながりや健康づくりへの意識をはぐくんでいる。

 市中心部の三原港からフェリーで25分。初夏の日差しがまぶしい9日、3年生約60人が市沖合の佐木島を訪れ、収穫期を迎えた島特産のアリスメロンが実るビニールハウスに足を踏み入れた。「うわっ、暑い」。あまりの蒸し暑さに驚きの声が上がった。

 「水やりの調節に一番気を使うんよ」。約15アールの畑を持つ丸本住一(すみかず)さん(78)が苗の植え付けから収穫までの手順を説明。児童はメロンに触り、熱心にメモをとる。毎年、出荷前には予約でいっぱいになる人気の特産品の栽培現場を体感した。益田雄斗君(8)は「あんなに暑いなんて。農家の人の苦労がよく分かった」と驚いていた。

 そのメロンは1週間後、給食に登場した。「大好評でしたよ。『あのメロンが』と感じて食べる意義は大きい」。食育を受け持つ土井美樹教諭(39)が強調する。

▽紙芝居使い説明

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1年生に朝食の大切さを指導する土井教諭(奧)

 2003年度から栄養職員として給食管理などに当たっていた。07年度からは「栄養教諭」の資格を取得し、食育のカリキュラム作成や授業を受け持つようになった。

 農場訪問や特産のタコ漁の見学、地場食材の給食、児童のたこ飯づくりなどを試みた。「低学年で食に関心を持たせ、中学年で必要性を感じさせる。高学年で調理を実践する」と、段階を踏んだ指導を心掛けている。

 中でも朝食の大切さを伝える取り組みには力を入れる。4月に入学したばかりの1年生には紙芝居などを使う。担任教諭と一緒に「朝ご飯を食べないと元気が出んよ」「いろんな種類を食べて」などと呼び掛けた。

 児童の朝食摂取率に結果が表れてきている。全児童を対象にした調査では、05年度の88%から09年度は96%に伸びた。保護者も一緒に朝食を食べるようになるなど、家庭に好影響が波及した例もあったという。

▽複数の教科横断

 同小の一連の食育活動を市教委も先進的と位置付ける。同小は本年度、地元の食材を積極的に取り入れた給食を提供する地場産物活用食育推進事業の指定校にも選ばれ、食材の新たな調達ルート構築に乗り出す。

 「地元の産地を学ぶのは社会、農産物の成長を学ぶのは理科といった具合に、食育はさまざまな教科に通じる重要な教材の一つ」と土井さん。「何よりも、食を通じた健康づくりが子どもたちの将来の夢を実現させる土台づくりになる」と話している。(金井淳一郎)

(2010.6.28)

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