背景に運動時間減少 広島市で伸び悩み 生活実態の分析急ぐ 広島県内の中学生の体力低下が目立つ。国が1月に公表した初の「全国体力テスト」の結果では、8種目の数値を得点化した「体力合計点」が、男女とも全国47都道府県で30位と低迷した。背景には運動量の減少など生活習慣の変化がある。(田中美千子) 「ウインターチャレンジ 42・195キロを走ろう!」。広島市立五日市南中(佐伯区)の廊下に、ランニングを呼び掛ける模造紙が張り出されていた。 チャレンジは冬休み直前に開始。希望者は模造紙に名前を書き込み、約二キロの学校外周を一周走るたびにシール一枚を張る。一、二年の三分の一強にあたる約百四十人がエントリーし、うち百人が約二週間で目標の42・195キロを達成した。 ▽授業に余裕なし 保健体育科の金村成義教諭(46)は「ゲームの普及や塾通いが影響し、子どもは年々、体を動かさなくなっている。動機付けの工夫が必要」と強調する。市が「体力つくり推進モデル校」に指定する五中学校のうちの一つだが、「中学のカリキュラムは体力づくりに特別な時間を割く余裕がなく、即効性が追求しにくい」と金村教諭。来年度のメニューに頭をひねる。 中学生の体力低下は全国共通の問題だ。体力テストは昨年四―七月、小五と中二を対象に実施された。一九八五年度の結果と比べると、児童・生徒の半数以上が当時の平均値を下回った。 体力テストの結果に県も危機感を募らせる。八〇点満点の体力合計点は、都道府県間で約六―一〇点の差が出た。県内の小学生は男女とも全国平均を上回った。しかし、中学生は男子は四一・一四で、全国平均を〇・三六点下回った。女子も四七・八一で、〇・五七点届かなかった。 文科省の分析によると大都市ほど体力合計点が低い傾向がある。広島県の場合も、広島市の中学生男女の得点が伸び悩む。全国でも大都市を抱える東京、大阪、北海道、福岡などの都道府県が広島県の合計点をさらに下回っている。 ▽食習慣にも要因 体力テストでは、個々の運動時間や食習慣も調査。一日二時間以上運動をしたり、朝食を良好に摂取したりするほど、体力合計点は高くなる―との傾向がみられた。 広島県の場合、「体育の授業を除き、一日の運動時間が二時間以上」と答えた生徒は、全国平均より男子で21・4ポイント、女子で18・1ポイント低かった。県教委、広島市教委とも現在、生徒の生活実態の分析を急いでいる。 子どもの体力低下を防ぐには、家庭での食生活の改善や運動量の確保が欠かせない。だからこそ、まずはすべての学校現場が危機感を持ち、「家庭での意識変革」を促す、その学校ならではの対策を打ち出すべきだ。 (2009.2.2)
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