中国新聞



(下) 地域の力

親たち発奮「皆で見守る」
溝埋める努力 今こそ

 「私たち親が何とかしなければ」。広島市中区の江波中PTAは、夏休みだけだった夜間パトロールを今年から通年にした。先に始めた地域の住民と週一回、生徒が集まる公園やコンビニエンスストアなどを回る。「グループの人数が増えれば増えるほど、非行は進み学校も荒れる。子どもを地域全体で見守っていきたい」。中元光也会長(48)は力を込める。

地域住民と一緒に夜間パトロール活動を始めた江波中の保護者ら(22日)

 別の中学では生徒の落書きが目立ったが、親と住民も加わって消す活動を始めた後、なくなった。

■ つながり必要

 幟町中は昨夏、住民十五人を学校の協力者、「コラボレーター」に指定。声掛けをしてもらい、情報も交換する。この夏からは顔写真を校内に張り出し、生徒が顔を覚えられるようにする。光原達夫校長は「子どもに、もっと大人とのつながりを持たせたい。一緒に何かをやった人の前で悪いことは絶対にできないから」と強調。今後は町内の掃除や公民館祭りなどの行事に、より多くの生徒を参加させる。

 警察も少年犯罪の抑止に力を入れる。広島市中心部では広島中央署の「職質検挙隊」のメンバーが夜間、パトロールを展開。七月の補導件数は前の月の三倍に増え、ひったくりの発生は三分の一に減った。

 同隊の板谷幸二警部補は、少年少女はコンビニなどを拠点にバイク盗や万引を繰り返していると分析。「たまり場で見張りを強め、家に帰るよう声を掛け、犯罪を防ぎたい」と話す。

■ 警察とも連携

 少年非行が低年齢に広がり、粗暴になっている現状は地域全体の課題だ。県警と「減らそう犯罪」県民運動の共同研究をしている広島大大学院文学研究科の越智貢教授(応用倫理学)は「学校は内部だけで問題を抱えがち。保護者と一緒に問題点を探ったり、住民や警察にも協力を求めたりして共に解決する姿勢が欠かせない」と言う。

 元県警本部長で東京都の竹花豊副知事は、著書で少年事件に触れ、「事件を引き起こした少年の性格に原因を求めることは誤りで、社会が生み出した病理的側面と受け止めるべきだ。関係者の溝を埋め、新たな連携の力を生み出すことができないか」と提言する。

 県警は昨年、広島市と周辺の民間団体に呼び掛け「立ち直り支援ネットワーク」を発足。学習やサークル活動、福祉体験など、それぞれの少年に合った支援を始めた。広島には住民らが暴走族と向き合ってきた蓄積もある。家庭、地域を挙げて少年との溝を埋める活動に取り組んでいこう。

(2005.7.31)

「荒れる子どもたち」

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